白亜紀スーパークロン中期の地磁気双極子は強かった?(U)

*若林 賢一[1], 綱川 秀夫[1]

東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻[1]

Strong dipole field at the middle of the Cretaceous superchron(U)

*Kenichi Wakabayashi[1] ,Hideo Tsunakawa [1]
Tokyo Institute of Technology [1]

We have performed further paleointensity study at the middle of Cretaceous superchron using the 102Ma granitic rocks from Abukuma region. Previously a component with relatively lower inclinations of 20-25 degree was detected for higher coercivity spectra(Hc > 70mT). In this study we have analyzed these components in more detail to apply the Thellier method. As a result, they have major peak of 500〜600℃ in blocking temperature spectra associated with two minor peaks of 300〜375℃ and 640〜700℃.

前回の合同学会発表(若林、綱川 2001)に引き続き、約102MaのAr-Ar年代を示す福島県阿武隈地域入遠野花崗岩体試料の7サイト(TN05〜11)を用いて、白亜紀スーパークロン中期における古地磁気強度の測定を行っている。これまでの研究により、この花崗岩試料には以下の3つの主な磁化が存在すると考えられる。 1)保磁力(Hc)が約70mT以下、ブロッキング温度(Tb)の下限が500℃以上のマグネタイト。伏角(I)=35°〜50°の磁化成分が全サイトに見られる。 2)Hcが約70mT以上まで分布し、Tbが350℃以上のマグネタイト。I〜20°の磁化成分。主にサイトTN09,TN11に見られる。 3)ピロタイト(TC〜320℃)。I>35°であり、TN10以外の試料ではマイナーな磁化成分。 磁化成分2は、保磁力・ブロッキング温度とも分布範囲が相対的に広いこと、低伏角であること(古緯度=10〜15°)、黒雲母Ar-Ar年代が102Maのプラトー年代を示すことと言う理由から、初生磁化(TRM)であろうと考えた。今回、この成分に対してさらに実験を行った。まずTN09,TN11にて採取された無方位試料各々1個に対して、低温消磁を施した後70mT〜90mTまで段階交流消磁を行い、その後700℃まで段階熱消磁を施して高保磁力成分のブロッキング温度分布を調べた。 その結果、両サイトの試料で300〜375℃、500〜600℃、640〜700℃の範囲に主な磁化スペクトル分布が確認された。これまでは磁化成分2に対するブロッキング温度分布は350℃〜約600℃まで比較的幅広い範囲を持つのではないかと考えていたが、75〜80%の磁化が500〜600℃のブロッキング温度をもつことがわかり、マグネタイトが主な磁化のキャリアーだと思われる。また300〜375℃において約5%、640〜700℃において約15%の磁化分布が見られることから、ピロタイトおよびへマタイトが若干存在している可能性もある。さらに主成分解析により300〜375℃と500〜600℃の温度範囲で古地磁気方位を求めてみるとさほど大きな違いが見られないことがわかった。TN09の試料に関しては、640〜700℃で他の2つの成分とは異なる磁化方位が検出された。 これまでの古地磁気強度測定では、TN09,TN11の高保磁力成分に対して2回加熱ショー法(低温消磁・真空加熱)を適用した結果、10個中6個の試料の測定結果が合格した。それらの平均強度は64.6+/-5.3μT、VDMに換算すると15×10^22Am^2となり現在の2倍近い大きな値が得られている。現在、TN09,TN11の高保磁力成分に対して、低温消磁と60〜70mTの交流消磁を組み合わせたテリエ法を行い、古地磁気強度を測定しており、その結果も報告する予定である。 またこれまでの研究で、初生磁化の検出が難しかったTN05,TN06に対しても、低温消磁を適用して古地磁気方位を解析した。その結果50〜60mT以上の成分に低伏角の成分が見受けられる試料がある。このことから、より系統的な古地磁気方位および古地磁気強度の測定を進める予定である。