マグネトシースにおける磁力線のドレーピング - Geotail, IMP-8, Wind 観測 -

*松沢 謙治[1], 田口 聡[1], 向井 利典[2], 斎藤 義文[2]

電気通信大学[1]
宇宙科学研究所[2]

Properties of the field line draping in the magnetosheath based on Geotail, IMP-8, and Wind

*Kenji Matsuzawa[1] ,Satoshi Taguchi [1],Toshifumi Mukai [2]
Yoshifumi Saito [2]
Univ. of Electro-Communications[1]
ISAS[2]

The draped magnetic field line in the magnetosheath enters from one side of the tail, bifurcates at the tail boundary, rejoins at the opposite side, and exists, as projected onto a plane perpendicular to the sun-earth line. We examined whether the plane formed by the bifurcation points and the X-axis contains the IMF vector or tilts from the IMF, using Geotail, IMP-8, and Wind magnetic field data. Results of analyses show that significant tilting occurs. Details of the IMF dependence of the tilt angle are presented, and why such tilting can occur is discussed.

 マグネトシースの磁力線の方向が IMF どのように異なるかにつ いての基本的な点は、 70年代半ばまでにほぼ理解されている。シ ースの磁力線の主たる形状は、磁気圏にまとわりつくドレーピン グである。ドレーピングの Y-Z 平面の特性については、その後 90年代はじめにいくつかの研究が進められ、そのうちの1つの研究 (Kaymaz, et al., GRL, pp. 829-832, 1992)は、興味深い報告を している。IMF の Y 成分が卓越する時、シースの磁力線は、朝ま たは夕方側の磁気圏と接する辺りで2つに分岐し、テールにまとわ りつくようにして、再び反対側で合流する予想された形状を示す が、この分岐点とX軸とからなる平面は、IMFベクトルからずれる というものである。報告によると、この平面は、IMF By>>0のとき 、午後側が Z>0 へ、午前側が Z<0 にずれるように回転し、By<<0 に対しては逆にずれる。ずれの角度は最大で17°をとる。Kaymaz たちの結果は、多量のデータに基づいているものの、その統計に はさまざまな仮定があり、得られた結果が現象のスムーズアウト を含んでいる可能性もある。実際にそのようにずれるとすれば、 どのような解釈が考えられるのであろうか。本研究では、Geotail 、IMP-8、Windが取得したデータをもとに、磁力線の分岐点とX軸 とからなるこの平面の問題を取り扱う。
 我々のアプローチは、Wind が観測した IMF のクロックアング ル変化に注目し、シースの Geotail または IMP-8による観測磁場 に対応する IMFを 5分以内の精度で決め、さらにシース磁場のド レーピングの X 成分を詳細に調べる方法をとる。1995年1月1日か ら1997年3月31日までの Geotailのデータから、5分毎のデータを1 つのイベントとして、IMF の対応がつく 529例を同定した。この ときの Geotailの観測位置は、X=0〜-35[RE]、Z=-1〜11[RE]に広 がっており、約4分の3のイベントが午後側であった。IMF のクロ ックアングルについてデータを分類すると、マグネトシースの磁 場は、IMFをほぼ含む面で強くX方向を向いていることがわかる。 その面からずれると、高緯度に向かう Z 成分が卓越する。X 成分 磁場が強いことは、磁力線が昼間のマグネトポーズ付近にまとわ りついていることを示唆し、これは、シース磁力線の分岐点また は合流点付近を観測していると解釈できる。これに基づくと、磁 力線の分岐点と合流点とX軸とからなる平面は、IMFの向きから 20 °の範囲に広く存在することになり、ずれの存在を示唆する。特 定のクロックアングルに対して、Kaymazたちが主張する一定方向 へのずれが見られるようではあるが、これが有意なものはどうか さらに検討が必要である。IMF の向きに応じてずれがどのように変 わるかについて調べた結果も示す。また、より高緯度を飛翔して いる IMP-8の観測データを加えてイベント数を増やし、広範囲に わたる分布も報告する。