全天大気光イメージャーを用いた二地点・二波長同時観測による 内部重力波の長期観測データの比較
*江尻 省[1], 塩川 和夫[1], 小川 忠彦[1]
五十嵐 喜良[2], 中村 卓司[3]
名古屋大学太陽地球環境研究所[1]
通信総合研究所[2]
京都大学宙空電波科学研究センター[3]
Comparison of short-period gravity waves in two nightglow layers observed by CCD imagers at two separated sites for 1998 - 1999
*Mitsumu K. Ejiri[1]
,Kazuo Shiokawa [1],Tadahiko Ogawa [1]
Kiyoshi Igarashi [2],Takuji Nakamura [3]
Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University[1]
Communications Research Laboratory[2]
Radio Science Center for Space and Atmosphere, Kyoto University[3]
Using three all-sky cooled-CCD imagers simultaneous observation
of short-period gravity waves has been carried out since October
1998 at Shigaraki (34.9N, 136.1E) and Rikubetsu (43.5N, 143.8E)
for airglow emissions of OH (peak height: 86km), OI (557.7nm,
97km) and OI (630.0nm, 250km). Such long-term multi-point multi-height
observations of short-period gravity waves have not been reported.
In this presentation, we will classify the characteristics of
gravity waves observed in OH and OI (557.7nm) images at these
two stations for 1998-1999. Horizontal wind data obtained by
two MF radars at Wakkanai and Yamagawa will be also used to show
background wind profiles.
名古屋大学太陽地球環境研究所ではOMTI(Optical Mesosphere Thermosphere Imagers)の一部である3台の全天大気光イメージャ
ーのうち1台を北海道陸別総合観測室(43.5N, 143.8E)に、2台を
信楽MU観測所(34.9N, 136.1E)に設置し、1998年10月より、中
間圏界面付近の夜間大気光の同時観測を始めた。これらの全天大気
光イメージャーは視野角が180度(魚眼レンズ)、画素数は512x512 ピクセルで、各々が5枚の光学フィルターを備えており、機械的に
フィルターを交換することによって複数の大気光を自動で観測出来
るよう設計されている。また、スケジュールファイルによりネット
ワークを介して観測時間を制御することが出来るため、無人での定
常観測が可能である。陸別のイメージャーはOHバンド、
OI(557.7nm)、OI(630nm)の大気光を時間分解能5.5分で定常観測し
ており、信楽では2台のイメージャーを用い、1台はOI(557.7nm)、
OI(630nm)の大気光を時間分解能5.0分で、もう1台はOHバンド、
O2バンドの大気光を時間分解能2.5分で定常観測をしている。二地
点間の地理的距離は、およそ1200kmである。この定常観測により、
現在までにおよそ三年分のイメージデータが取得されており、短周
期内部重力波に関する二地点での季節的・緯度的差違を議論するこ
とが可能である。
これまでの内部重力波の単一観測点での長期イメージング観測に
よる研究から、中緯度帯での内部重力波の発生頻度や位相の伝搬方
向には強い季節依存性があることが知られている[Wu and Killeen, 1996、東川他, 1999、前川他, 2000、京都大学大学院工学研究科修
士論文]。短期間の多点イメージング観測による内部重力波の空間的
広がりと伝搬に関する研究では、ほぼ同様の水平パラメータを持つ
内部重力波が、離れた地点で同時に観測されることがあることが報
告されている[Taylor et al., 1998、Shiokawa et al., 2000]。この理
由として、1)低い高度における内部重力波のソースが水平方向に広
がりを持っており、上方伝搬してくる大気重力波に対する背景風の
フィルタリング効果が広い範囲で一様である、2)大気光高度で大気
重力波がダクト伝搬している、の二つが考えられているが、特定に
は至っていない。また、複数波長の大気光を用いた内部重力波の長
期観測は、これまで成されていない。
本研究では、二地点(信楽・陸別)での二つの大気光(OH・
OI(557.7nm))の一年分(1998-1999)のイメージング観測データに
見られる内部重力波の伝搬パラメータについて統計解析を行う。前
回調べた内部重力波の発生頻度・伝搬方向と合わせて、今回新しく
波長・位相速度の季節依存性や緯度的・高度的差違についても調べ
る。さらに内部重力波の伝搬と背景風の関係についても考察する。
その際背景風としては、稚内(45.4N, 141.7E)と山川(31.2N, 130.6E)に設置され、中間圏の風系を定常的に観測している通信
総合研究所のMFレーダのデータを用いて議論する予定である。