電離圏カスプ領域における極方向へ移動する過渡的現象の研究(その2)

*河野 政樹[1], 藤井 良一[1], 野澤 悟徳[1]
小川 泰信[1], 杉野 正彦[1]

名古屋大学太陽地球環境研究所[1]

Study on poleward moving transient phenomena around the dayside cusp (2)

*Masaki Kono[1] ,Ryoichi Fujii [1],Satonori Nozawa [1]
Yasunobu Ogawa [1],Masahiko Sugino [1]
Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University[1]

Electrodynamic characteristics of transient phenomena that move recurrently from the dayside cusp into the polar cap are determined. We use simultaneous ESR and EISCAT VHF radar data obtained during the ISAS rocket campaign in late 2000. This dataset enables us to observe a wide latitudinal range of the polar ionosphere. By assuming that the cusp was within the field-of-view of the VHF radar in Nov 26-27, 2000, with referring to the DMSP data, we conclude that the low latitude boundary of the cusp corresponds to that of the electron temperature enhancements. Intermittent, strong plasma flows start to occur around the low latitude boundary of the cusp, and often weaker flows already exists in a lower latitude region. Furthermore these flows seem to continue to the strong plasma flow around the cusp.

 北極域電離圏カスプ周辺領域において、電子密度の高い領域が極方 向へ移動する現象が、欧州非干渉散乱レーダー (EISCATレーダー) シ ステムを用いた観測により、報告されている [河野他、地球惑星科学 関連学会2001年合同大会予稿集] 。  昼側磁気境界面で起こる、惑星間空間磁場と地球磁場との磁気再結 合に関連づけられる Flux Transfer Event (FTE) や、その電離圏へ の投影である Poleward Aurora Moving Form (PMAF) との関連が考え られるこの現象のエレクトロダイナミクスを定量的に理解すること は、局所的にみられる太陽風から磁気圏への物質とエネルギー流入現 象の電磁気的性質や空間分布、時間変動を理解するうえで重要であ る。  本研究では、2000年冬期に行われた、宇宙科学研究所ロケットキャ ンペーンでのデータのうち、2000年11月26日、27日に着目する。この キャンペーンは、ロケットによる直接観測ならびに、非干渉散乱レー ダー (ISレーダー) 、短波レーダー (HFレーダー) 、フォトメー ター、地磁気計等の同時観測により、昼間側カスプ領域の電離圏の物 理を探るために行われた。これら両日、EISCATレーダーシステムで は、オーロラ帯からカスプ、極冠帯までの広い緯度領域をカバーする ために、EISCAT VHFレーダー(トロムソ、北緯69度、東経19度)と、 ESR 32mアンテナ(ロングイヤービン、北緯78度、東経16度)の双方 を、共に仰角30度で地理北極方向へ向けた観測を行った。  EISCATレーダーの解析データ及び、スヴァールバル上空を飛翔した Defence Meteorological Satellite Program衛星(以下DMSP衛星) の粒子データから、26日、27日両日、電離圏カスプ領域がEISCAT VHF レーダーの視野内に入った時間帯があると考えられる。これにより、 電子密度の高い領域が極方向への運動を開始すると考えられている電 離圏カスプ領域の物理量を知ることができる。その結果において、 DMSP衛星によって得られたカスプの低緯度側境界と、EISCAT VHFレー ダーによってとらえられた、降下粒子に起因する電子温度上昇領域の 低緯度側境界とに、比較的良い一致をみることができた。更に、極向 きの局所的な強いプラズマの流れは、カスプの低緯度側境界から始 まっており、より低緯度側では極向きの比較的弱いプラズマの流れが 既に存在することも明確にとらえられた。  また、上述した、EISCATレーダーでとらえられたカスプの低緯度側 境界近辺で発生している、断続的におこる強弱のイオン速度の変動は 周期的なものであるが、その変動と、地球磁場の偏角成分変動(D成 分変動)を比較すると、これらのピークには、非常に良い対応がみら れた。  キャンペーン中、同時に稼動していた固定式ESR 42m アンテナによ り、カスプ領域の直下地点からの沿磁力線方向の物理量を知ることが できることから、本講演では、ESR 42m アンテナの視線方向にカスプ 領域が入っていると考えられる時間帯、またその前後の時間帯での物 理パラメータの高度的変化、及び時間的変化にも着目して、プラズマ が極方向へ移動する現象を詳細に解析し、それらの結果を総合して議 論を進める予定である。