アラスカにおいて地磁気静穏時に出現した午後側パッチ状オーロラ
−アラスカプロジェクトASI報告その3−
*久保田 実[1], 長妻 努[1]
独立行政法人通信総合研究所[1]
"Evening Rayed Patches" observed in Alaska during a geomagnetic quiet period -- Alaska-project ASI report III
*Minoru Kubota[1]
,Tsutomu Nagatsuma [1]
Communications Research Laboratory[1]
As part of an international cooperative research project with
GI of Univ. of Alaska, we developed two all-sky imagers (CRL-ASI),
and installed them at Poker Flat (Mlat 65.6N), Alaska. We have
conducted aurora/airglow observations since October 2000. Fig.
1 shows OI 557.7nm images and keograms obtained by the CRL-ASI
on Oct. 27, 2000. Patch auroras accompanied with ray-structures
appear during 03-06UT (15-18MLT). The rayed patches stayed above
Poker Flat during 03-05UT, and started westward drift after 05UT.
It suggests that the aurora is co-rotating during 03-05UT, and
changed to convective motion after 05UT. Geomagnetic activity
was quiet during this period. In this paper, we will present
details of this phenomena comparing with satellite and radar
observations.
通信総合研究所(CRL)では現在アラスカ大学との国際共同研究とし
てアラスカに於いて極域中層大気総合観測のためのプロジェクトを
進めている。このプロジェクトの一環として我々は2台の全天型イ
メージャ(CRL-ASI)を開発し、2000年10月から2001年4月にかけてア
ラスカ・ポーカーフラット実験場において観測を実施した。CRL- ASIは以下のような10波長でのイメージング観測が可能であり、通
常は月の無い暗夜に全波長を5分の時間分解能で撮像する。
1号機:proton(486.1nm), OI(557.7nm), N2+1NG(427.8nm), background(572.3nm), Na(589.0, 589.6nm)
2号機:background(481.4nm), OI(630.0nm), OI(844.6nm), O+(732.0nm), OH Meinel bands(NIR)
Fig.1は2000年10月27日夕方における557.7nm発光の観測イメージ、
ならびに1晩を通したkeogramである。イメージ中にはパッチ状で
かつレイ構造を伴うオーロラが見て取れる。またkeogramからこの
パッチ状オーロラが3時間以上継続していることがわかる。同様の
構造は背景光のチャンネルには見らないことから、これが雲ではな
いことが確認されている。初期解析の結果このオーロラには以下の
ような特徴があることが分かった。
1) 03UTの観測開始時から06UT以降まで(MLT15時〜18時)3時間以
上にわたって継続した。
2) オーロラのパッチは、0300UT〜0350UTにかけて視野内をゆっく
りと西方に移動し、0355UT〜0440UTにかけては方向を変え東方に移
動し、またその後方向を変えて西方に移動しやがて発光強度を落と
しつつ視野から外れる、といった具合のあたかも風になびくような
動きを示した。
3) 同一のパッチ構造が3時間に渡り観測視野内に留まったように見
える。
4) OI(557.7nm)とN2+1NG(427.8nm)に構造が明確に現れておりOI (630.0nm)には明確な構造が見られない事から、降り込み電子の持
つエネルギーはやや高めであると推測される。
5) OI (630.0nm)はこのパッチ状オーロラ出現領域の高緯度側で非
常に暗くなっており、さらにその高緯度側で明るくなっている。
6) プロトンオーロラがパッチ状オーロラ出現領域の高緯度側で明
るくなっている。
7) 現象発生時の地磁気活動は静穏であった。
似たようなパッチ形状を示すオーロラとしては明け方のパルセーテ
ィングオーロラが知られているが、この現象は午後側で観測されて
いる。また同一のパッチ構造が3時間に渡り観測視野内にとどまる
というのは、このオーロラが地球と共回転していることを示唆す
る。このような午後側のオーロラはこれまであまり報告例がなく、
このことはCRL-ASIの感度・精度面でのアドバンテージを証明する
ものといえる。本講演ではこれらのオーロラについて衛星やレー
ダーの観測データなどとの比較も交えて報告する。