MT tensor decompositionにおけるsite gainの確率分布について
*宗包 浩志[1], 歌田 久司[1]
東京大学地震研究所[1]
On a PDF of the site gain in MT tensor decomposition
*Hiroshi Munekane[1]
,Hisashi Utada [1]
Earthquake Research Institute, Univ. Tokyo[1]
A theoretical PDF of the site gain in MT tensor decomposition
is proposed and compared with those estimated from observations.
As a distortion model, the simple model proposed by Groom and
Bailey (1991) is selected where the distortion is caused by a
half-hemisphere conductivity heterogeneity embedded in half-space.
In this model, the site gain is related to a conductivity contrast
between the half-hemisphere and the surrounding medium. The log10-normal
distribution is assumed for the PDF of the conductivity contrasts,
which is supported by our VLF observations. The proposed PDF
is compared with those estimated by Jones (1988) and Munekane
(2001) and good agreement is observed.
MT法のtensor decompositionにおいて、site gainはGroom and Bailey decompositionでは決めることが出来ない。このため、インバージョンの際に同時に決める(cf. Ogawa and Uchida, 1996; deGroot-Hedlin, 1991)手法が提案されている。また、Groom and Bailey decompositionによらず、地磁気変換関数を用いて直接decompositionを行う手法も提案されている(Utada and Munekane, 2000; Munekane and Utada, in preparation)。これらの手法を用いる際に、制約条件としてsite gainの確率分布を導入することはより確かな推定をする上で重要であると考えられる。しかしながら、これまでsite gainの確率分布を推定する試みはなされてこなかった。そこで本研究では、ディストーションの簡単なモデルを基にsite gainの確率分布を導出し、データから推定された分布と比較する。
ディストーションのモデルとしてはGroom and Bailey (1991)で
採用された簡単な半球モデルを採用した。このモデルでは、ディストーションの原因となる半球状の電気伝導度異常の電気伝導度と、周囲の半無限媒質の電気伝導度とのあいだのコントラストを指定するとsite gainを決めることができる。コントラストの確率分布はその常用対数が0を中心とする正規分布をするとして与えた。この分布は我々のVLF-MT観測からも支持される。その結果site gainの確率分布を解析的に表わすことが出来た。常用対数で見た分布は0をはさんで非対称であり、負側に長い尾を引き、正側には上限が存在する。また平均は厳密に0とはならない。
得られた分布を実際のデータから推定されたsite gainと比較した。用いたのはJones (1988)とMunekane (2000)の結果である。得られたsite gainの数が少ないので確率分布としては不確かさが残るが、両者とも本研究で得られた確率分布と同じく非対称な分布を示し、最小二乗法で最適モデルを求めた結果ある程度分布を説明することが出来た。従って、本研究で得られた確率分布は実際のsite gainの確率分布の第1次近似として十分使えるということが示された。また、電気伝導度コントラストの分散が小さいときには平均は0に近くなり、deGroot-Hedlin (1991)やMunekane (2001)で導入されたsite gainの和が0になるという制約条件は妥当であることが示された。