ポーカーフラットとアンデネスにおける中間圏風速の比較観測
*村山 泰啓[1], 大山 伸一郎[1], 五十嵐 喜良[1]
Werner Singer[2], Dennis Riggin[3]
通信総合研究所[1]
Leibniz-Institut fuer Atmospharen Physik[2]
Colorado Research Associates[3]
Comparative observation of mesospheric winds at Poker Flat and Andenes
*Yasuhiro Murayama[1]
,Shin-ichiro Oyama [1]
Kiyoshi Igarashi [1],Werner Singer [2],Dennis Riggin [3]
Communications Reseach Laboraotry[1]
Leibniz-Institut fuer Atmospharen Physik[2]
Colorado Research Associates[3]
This study employs two MF radars at Poker Flat, Alaska (65N,
147W) and Andenes, Norway (69N, 16E). FCA horizontal wind data
are analysed during a period of January-March 1999. Lomb periodgram
analysis are applied to zonal and meridional winds at the altitude
of 82 km. Persistent semidiurnal tides are found commonly for
the two sites, but amplitude of 20 m/s at Poker Flat is dominantly
larger than 10m/s at Andenes. Diurnal tide, with peak amplitudes
of 5-10 m/s commonly between the two sites, was unstabler than
the semidiurnal component. Longer period variability (>4 days)
tended to enhance in February and March. Dominant periods were
6-7 days at Poker Flat and 4 days at Andenes, suggesting that
different waves were dominant above the east and west hemispheres
in the Arctic.
1.はじめに
MFレーダーは中間圏高度の風速の鉛直プロファイルを観測する
有力な手段の一つであり、現在世界中で20基以上が赤道域・中緯
度から北極域・南極大陸といった広い範囲で稼動している。これに
より中間圏力学過程の全球的な振舞いの理解に近づくことができる
と期待される。
なかでも極域中層大気中の力学場は、極渦およびそのプラネタリー
波による変形と化学・力学結合過程、最近議論されている東西波数
1の半日周期波動 [e.g., Forbes et al., 1995]など、他の緯度帯
で見られない特徴をもっている。高緯度特有の力学場を調べるため
の手段として、今回データを入手できたアラスカとノルウェーの2
地点の3ヶ月間の観測データから風速場の比較を行った。北緯65
〜69度に位置するこの2地点は、経度差が163度と東西半球に
またがっているため、観測される風速変動が局所的なものか北極域
全体に共通したものか、またその東西半球での振る舞いの違いなど
を議論できる。
2.観測
用いたデータは、米国アラスカ・ポーカーフラット (65N, 147W)、
およびノルウェー・アンデネス(69N, 16E) におけるMFレーダーを
用いてFCA(相関法)により得られた1999年1−3月の水平
風速である。高度範囲は60−100km、時間・高度分解能は
3分・4kmである。解析では東西・南北成分にそれぞれについて
30分〜1時間平均した風速値を主に用いる。
3.観測結果
ロム(Lomb)ピリオドグラム法を用いたダイナミック・スペクト
ルを高度82kmの東西風・南北風についてそれぞれ求めた。スペ
クトルのピーク振幅の大きさの周期帯と時間変動に着目すると、ま
ず両地点に共通した半日周期潮汐が顕著にみられた。振幅は平均し
てノルウェーで10m/s程度であるのにくらべてアラスカでは振幅が
20m/s程度と、2地点で大きく異なっていた。1日周期潮汐の振幅は変
動が大きいが、両地点で同程度の5-10m/sであった。1日潮の振幅は
全体として両地点とも、1月後半には小さくなり、2−3月に大きく
なる傾向が見られた。プラネタリー波の周期帯の一つである2−3日
周期の成分は、1月後半に増大した。4日より長い周期帯では、アラ
スカでは6−7日、ノルウェーでは約4日の周期帯の振幅が、いずれ
も2−3月に増大しており、必ずしも同じ波動が東西半球で卓越し
ていたのではない可能性を示唆している。
4.まとめ
アラスカとノルウェーにおける同時期の中間圏東西・南国風速の潮
汐・プラネタリー波の周期帯の風速変動の時間変動を調べた。半日
潮汐・1日潮汐については共通した時間変動がみられるが、振幅の違
いがある場合がありnon-migrating tideなどの存在が示唆される。
短周期(<7日)のプラネタリー波については両地点で必ずしも同じ
周期帯が卓越しないことがあり、異なる波動成分が東西半球で見え
ている可能性もある。