Geomagnetic Jerk の発生時刻の場所依存性から推定される マントル電気伝導度の不均一性

*長尾 大道[1], 家森 俊彦[1], 樋口 知之[2]

京都大学理学研究科[1]
統計数理研究所[2]

Inhomogeneous Mantle Conductivity Estimated from Difference of Geomagnetic Jerk Occurrence Epoch

*Hiromichi Nagao[1] ,Toshihiko Iyemori [1]
Tomoyuki Higuchi [2]
Graduate School of Science, Kyoto University[1]
The Institute of Statistical Mathematics[2]

It is believed that geomagnetic jerks, which are sudden changes in trends of secular variations, occurred in 1969, 1978, and 1991, and that they are of the core origin. The jerks appeared in the southern hemisphere several years later following the northern hemisphere. This fact suggests that the mantle conductivity of the southern hemisphere is larger than that of the northern hemisphere. We estimate the conductivity of the southern hemisphere is at most twice as large as that of the northern hemisphere.

geomagnetic jerkは、地球主磁場の数十年変動のトレンドが わずか2、3年程度で急激に変化する現象であり、ヨーロッパ では 1969、1978、および 1991 年に起こったとされている。 特に 1969、1978年のjerkは地球規模で起こっており、コア 起源の現象であるとする学説が多い。
jerkが地上に現れる時刻は同時ではなく、おおよそ 南半球の方が北半球よりも数年程度遅く現れることが知られ ている(例えば、Alexandrescu et al. [1996])。これは、 jerkがコア表面で地球規模で同時に起こったと仮定すれば、 マントルの電気伝導度が、南半球の方が北半球よりも大きい ことを示していると考えられる。
Backus [1983] によれば、コア起源のjerkが地上に現れるま での時間は delay time と呼ばれ、マントルの電気伝導度を 特徴づけるパラメータの一つとなっている。実際には、jerk がコア表面で発生した時刻は不明であるため、delay time 自体を得ることは難しいが、この南北両半球の delay time の差から、マントル電気伝導度の水平方向の不均一性に関する 何らかの情報が導き出せると考えられる。
そこで本研究では、各観測所付近のマントルを、それぞれ 電気伝導度が一様な簡単な板状モデルで表現できると仮定し、 北半球と南半球とで、マントル電気伝導度がどの程度違えば 南北両半球の delay time の違いを説明できるかを見積もった。 各地磁気観測所におけるjerkの発生時刻の精密な同定には、 地磁気月平均値時系列に対して、Nagao et al. [2001] が 開発した統計モデルを当てはめる手法を用いた。
その結果、delay time にもよるが、南半球のマントルの 電気伝導度の大きさは、北半球のせいぜい2倍以内と考えられ、 オーダーが異なる程の大きな違いは期待できないことが 分かった。岩石実験などでも、マントル電気伝導度の水平 方向の不均一性は、オーダーが異なるほど大きくないことが 推定されているが、その結果とも一致している。