北海道東部域における地磁気全磁力経年変化

*西田 泰典[1], 杉崎 康弘[1], 高橋 幸祐[1]
宇津木 充[2]

北海道大学[1]
京都大学[2]

Geomagnetic secular variation in the eastern part of Hokkaido, NE Japan

*Yasunori Nishida[1] ,Yasuhiro Sugisaki [1]
Kousuke Takahashi [1],Mitsuru Utsugi [2]
Hokkaido University[1]
Kyoto University[2]

Continuous measurements of the geomagnetic total force revealed large amount of the secular variation in the eastern part of Hokkaido (about 1 nT/year in maximum). Piezo-magnetic effect is the likeliest candidate of the origin of the secular variation. We made ground magnetic surveys in this region to establish the detailed subsurface magnetic structure. Calculated piezo- magnetic variations are one order smaller than the observed ones when we assume the magnetic structure, the observed crustal deformation and the ordinarily used stress sensitivity of the rocks (1x10-4bar-1). To remedy this discrepancy, evaluation of the relevant in-situ stress sensitivity may be needed.

 北海道東部域で,千島弧に直交する測線上の5観測点で全磁力 経年変化観測を行ってきた.その結果,太平洋岸の観測点で 約1nT/年の経年的増加傾向が観測されたが,約20km 内陸部 では無視出来るほどの経年変化しか見られない.経年変化の 大きい観測点付近は火山などの分布はないが,磁気異常の強い 地域であることが特徴である.これらのことから,大きい 経年変化は地殻応力に伴う圧磁気効果に起因すると考えられる.  圧磁気効果の定量的議論の為には地下の磁気構造を知る必要 がある.しかし北海道東部域の航空磁気測量に空白域があるので, プロトン磁力計を用いた陸上サーベイを行い,得られた磁気 異常を説明するような地下磁気構造を推定した.その結果, 太平洋岸には玄武岩を思わせる10A/m 程度の磁化強度をもった 岩石が表層近くから約10km 深まで分布していることが推定 された.  推定された磁化物質に地殻応力を加えた際に期待される圧磁気 効果の計算を行った.計算にあたっては,地殻応力を石川・橋本 (1999)によるこの地域の歪み速度を参照し,また岩石の 応力感度を通常用いられる1x10-4bar-1 を仮定した.その 結果,内陸部に向かって経年変化の振幅が急速に減少する傾向 は説明できるものの,最大振幅は約0.1nT/年となり,観測 値の1割程度しか説明されなかった.このようなことはダム 地磁気効果でも云われてきており(例えば,Davis and Stacey, 1972; 大志万他,1991),今後野外観測に加え,実験室測定 などの研究を通じて,原位置での適切な応力感度を知る努力が 必要であろう.