大島1986年溶岩の古地磁気強度測定

*望月 伸竜[1], 綱川 秀夫[1], 山本 裕二[1]
若林 賢一[1], 大石 祐介[1], 若井 真也[1]

東京工業大学理学部[1]

Paleointensity study of the 1986 Oshima lava flows,
applying three different methods

*Nobutatsu Mochizuki[1] ,Hideo Tsunakawa [1]
Yuhji Yamamoto [1],Kenichi Wakabayashi [1]
Yusuke Oishi [1],Shinya Wakai [1]
Department of Earth and Planetary Sciences[1]

The Thellier method, the double heating technique (DHT) of the Shaw method and the DHT-Shaw method with low-temperature demagnetization (LTD) were applied to the 1986 Oshima basaltic lava flows. By the Thellier method, a mean paleointensity was 54.8+/-3.0 μT(N=3), higher than the expected intensity (45.6 μT). The LTD-DHT-Shaw method gave a mean paleointensity of 47.9+/-4.8 μT(N=4), which is close to the expected one.

Yamamoto et al. (submitted)は、酸化度の異なるハワイ・キラウエア 火山1960溶岩を採取し、テリエ法、2回加熱ショー法、低温消磁・ 2回加熱ショー法の3種類の方法を適用した。得られた平均古地磁気 強度は、DGRF1965(36.2 μT)に比較して、テリエ法では約27%大 きかった。一方で、2回加熱ショー法では約12%、低温消磁・2回加熱 ショー法では約9%大きかった。このことから、Yamamoto et al.は、 NRMとしてTRMだけでなくTCRMも獲得した可能性を指摘した。また、 低温消磁・2回加熱ショー法では、TCRMに影響を受けた試料を効率的に 棄却できることを示唆した。
この1960溶岩と同様に、異常な古地磁気強度を出す例が他の溶岩でも 見られる可能性がある。そこで、今回の研究では、溶岩冷却時の地球 磁場が45.6 μT(国土地理院1990.0年値にもとづく)である伊豆 大島1986年溶岩に対して、 (1)テリエ法、(2)2回加熱ショー法、(3) 低温消磁・2回加熱ショー法の3種類の方法を適用し、それぞれの方法 の測定結果を比較した。現時点での結果を次にまとめる。
(1)テリエ法: 54.8+/-3.0 μT(合格率3/4)
(2)2回加熱ショー法:39.5+/-12.4 μT(同2/6)
(3)低温消磁・2回加熱ショー法: 47.9+/-4.8 μT(同4/13)
テリエ法では、いずれの試料もアライダイアグラムにおいて150-400℃ の測定データが直線上に並ぶ。この直線部分は、NRMの40-50%を占めて おり、PTRM test も合格している。一方で、400-450℃以上の測定 データは、PTRMテストに合格せず、低温部(150-400℃)の傾きよりも 小さいので、熱変質が起きていると思われる。消磁曲線から、約250℃ と約550℃の2つのアンブロッキング温度をもつ成分があることが示唆 された。反射顕微鏡観察の結果、10-20μmのチタノマグネタイトの中 にイルメナイトラメラが観察され、溶岩噴出時に高温酸化が起きていた ことがわかった。テリエ法の室内加熱時にも約400℃以上で高温酸化が 進んだ可能性がある。低温消磁・2回加熱ショー法では合格率が4/13と かなり低かった。平均古地磁気強度は約48 μT と期待値の45.6 μT に近い。
現時点の結果からすると、大島1986年溶岩について、テリエ法から得ら れた強度は、期待される強度より約20%大きくなっているが、低温消磁 ・2回加熱ショー法では期待値との差が小さい。さらに、測定をすすめ て比較検討を行う予定である。