電子温度測定における飛翔体シース 
の影響に関する室内実験

*小田 琢也[1], 小山 孝一郎[2]

東京大学[1]
宇宙科学研究所[2]

Laboratory experiment - effect of a rocket sheath
on the electron temperature measurement

*Takuya Oda[1] ,Koh-ichiro Oyama [2]
University of Tokyo[1]
Institute of Space and Astronautical Science[2]

 It has been reported that Langmuir probe often gives the electron temperature which is higher than the neutral gas temperature at the height of 〜100km during daytime in the sounding rocket experiments. It is not clear yet whether this high Te has a geophysical meaning or is an artificial. The observation is contrary to the theoretical energy balance and the argument has continued more than 30 years. We have conducted space chamber experiment in order to attack this problem by assuming that high Te is due to the measurement in the sheath. Langmuir probe characteristic was obtained in the sheath that was formed in front of the biased metal wall. The preliminary result shows that Te measured in the sheath is higher than outside sheath. We are planning to do more laboratory experiment in the near future.

 観測ロケットによって得られる高度100-200kmの電子温度が中性 大気温度に比べて高いことが知られている。しかし、日中の観測に よると高度100km付近では中性大気密度がおよそ10^12(cm-3)に対し て電子密度は10^5(cm-3)であるので中性大気の温度が卓越するはず である。この高度100km付近でTe>Tnとなる原因が地球物理的なもの であるか、あるいは人為的なものであるかは1960年以来まだ明らか になっていない。本研究では電子温度が高く見積もられる要因とし て飛翔体のシースに注目した。
 電子温度測定においてシースが及ぼす影響について調べるため室 内実験を行った。実験方法はきわめて単純で、プラズマ中に1m×1m の導電性の板を立て飛翔体のボディーとし、適当な電位を与えた。 そして電子温度の測定には直径3mm長さが170mm(両側35mmはguard ring)の円筒Langmuir probe を用い、板とプローブの距離を変化さ せて電子温度を求めるための電圧-電流特性を得た。得られたデー タの解析から、板の電位をスペースポテンシャルに対して負に大き くするほどシース厚は大きくなり電子温度の測定にも遠くまで影響 を及ぼす結果となった。この場合電子温度は板の近傍では異常に高 く、離れるにしたがって電子温度は下がった。また板の電位をスペ ースポテンシャル付近にした場合には電子温度測定に及ぼす影響は 小さくなった。この結果は無衝突プラズマのシースに入ってきた電 子がシースの中で再び熱化することを示唆しており、理論的解明が なされなければならない。今後シース内の電子エネルギー分布と電 子の熱化に関係していると考えられる波動についても考察する。

参考文献 
K.I.Oyama, K.Hirao, P.M.Banks and P.R.Williamson., Planet. Space Sic.,28,pp207-211,1980. 
Masayuki Yamamoto.,博士論文,2000.
Reiko Yoshimura,Takeshi Imamura and K.I.Oyama 宇宙研報告,42 ,pp23-35,2000.