FT-IRによる金星大気近赤外観測

*大瀧 雄一郎[1], 村田 功[1], 福西 浩[1]

東北大学大学院理学研究科[1]

FT-IR Observation of the Venusian Atmosphere in the Near-Infrared Range

*Yuichiro Ohtaki[1] ,Isao Murata [1],Hiroshi Fukunishi [1]
Graduate School of Science, Tohoku University[1]

We are trying to observe the Venusian atmosphere using a Fourier transform infrared spectrometer (FT-IR) combined with a 60-cm telescope installed at Iitate Observatory (37.42N, 140.40E) of Tohoku University. This FT-IR system covers a wavelength range of 0.9 - 1.55 microns, which includes some "windows" of the Venusian atmosphere. Using this range, we plan to measure absorption spectra of CO2 and H2O in the lower atmosphere and O2 airglow at 1.27 microns in the lower thermosphere.

 我々はフーリエ変換型赤外分光計(FT-IR)を東北大学 惑星プラズマ・大気研究センター惑星圏飯舘観測所 (37.42N, 140.40E) の60cm望遠鏡に接続し、金星大気観 測を試みている。本分光計の観測波長範囲は現在のと ころ検出器にInGaAsを用いているため0.9 - 1.55 um の近赤外領域であり、この領域には金星大気における "窓"領域 (1.01,1.10,1.18,1.27,1.31,1.74,2.3 um) のいくつかが含まれている。"窓"領域の観測は金星 の厚い硫酸雲より下層の大気をモニターすることが可能 であり、特に太陽散乱光に邪魔されない夜側で有効であ る。各々の波長領域のエミッションは光学的厚さに対応 した特定高度の情報であるので、それらに含まれる吸収 線や輝線を用いてH2O、CO、HCl、HF、SO2、OCS等の微量 気体の分布を導出することができる。  我々は1,10、1.18 umの窓を用いてH2Oの吸収スペクト ルから混合比を導出することを考えている。この波長域 は金星表層から高度15 km程度までの情報を含んでいる。 また熱圏下部 (90 - 115 km) で発光している1.27 umの O2大気光の観測から発光強度 (これまでの観測例では数 MR) を導出可能である。また今後新たにInSb検出器を導 入する予定である。これにより観測波長範囲が5 um程 度まで広がるので、1.74、2.3 um (それぞれ高度15 - 30 km、26 - 45 kmに対応) の窓領域の観測が可能とな り、CO、HCl、HF等のスペクトルを取得可能となる。  これまでFT-IRの性能試験として室内実験で黒体炉を 光源としたSN比や、感度の測定などを行った。また惑 星の光が検出可能であることを確認するため4月に飯舘 の60 cm望遠鏡に接続し、金星および月の試験観測を行 った。本講演ではこれまでの性能試験の結果および試 験観測結果と、10月から再び行う試験観測の初期結果 を報告する。