トーラス状速度分布を持つ星間空間起源
ピックアップヘリウムイオンの発見

*岡 光夫[1], 寺澤 敏夫[1], 野田 寛大[1], 齋藤 義文[2]
向井 利典[2]

東京大学[1]
宇宙科学研究所[2]

Discovery of Torus-like Velocity Distribution of the Interstellar Origin Picked-up Helium Ions

*Mitsuo Oka[1] ,Toshio Terasawa [1],Hirotomo Noda [1]
Yoshifumi Saito [2],Tosifumi Mukai [2]
The University of Tokyo[1]
Institute of Space and Astronautical Science[2]

The interstellar-origin picked-up helium ions have been observed as the sphere-shell velocity distribution with a sharp cutoff at around two times the incident solar wind velocity. The broad pitch angle distribution is widely interpreted as the result of the pitch angle diffusion caused by the incident IMF perturbation. In the case of small IMF perturbation, however, a torus-like velocity distribution is expected because of the conservation of the initial pitch angle. In this presentation, the authors will report the first identification of the torus velocity distribution obtained by GEOTAIL.

太陽系は水素とヘリウムを主成分とする局所星間雲(密度n〜0.1[ 個/cc],温度T〜7000[K])の一端に位置していることが知られてい るが,両者の間の相対的な速度(〜25[km/s])のために「星間風」 を受ける.その際,電気的に中性の星間物質は太陽風の勢力範囲内 へ容易に侵入でき,各粒子は太陽重力に従ったケプラー軌道を描く .ここで一部のヘリウムは太陽紫外光や電子衝突などによって電離 されるため太陽風磁場によって捕捉され(ピックアップ過程),再 び太陽圏外縁へと輸送される.水素は第1電離ポテンシャルが低い ために電離されやすく,したがって太陽圏奥深くまで侵入できない .地球軌道(<〜1AU)でのプラズマ観測もヘリウムイオン(He+) が対象となる.地球軌道周辺ではまた,太陽重力によって牽引され たヘリウムの軌道が太陽に対して星間風の風下側にfocusされ,「 ヘリウムコーン」とよばれる高密度領域(位相空間密度f(v)〜8.0E -15[MKS unit])が見かけ上形成される.これはモデルフィッティ ングを行うことによって局所星間雲のパラメータを評価することが できるため,各国の探査機によって観測されてきた.我が国でもNO ZOMIやGEOTAILなどの探査機を用いた観測が行われ,一定の成果を 挙げている(Noda, 2000).
ところで,電離直後の「ピックアップイオン」は磁力線に対して一 定のピッチ角を持ったトーラス状の速度分布を呈するが,太陽風磁 場擾乱のためにピッチ角散乱を受け,一定時間経過後には球殻状速 度分布となる.従って太陽近傍(<〜0.5AU)でピックアップされる ヘリウムイオンが地球軌道(〜1AU)で観測される際には球殻状速 度分布で観測されるのが通常である.しかし,太陽風磁場擾乱が十 分に小さい場合には初期のピッチ角を保存していることが期待され る.そこで著者らは実際にトーラス状速度分布を持つピックアップ ヘリウムイオンが初めて観測されたことを報告するともに,これま でのGEOTAILデータを見直し,同様のトーラス状速度分布を探した 結果を提出する.