プラズマ圏・内部磁気圏探査衛星計画について

*小野 高幸[1]

東北大学大学院理学研究科[1]

A Proposal of Plasmasphere and Inner Magnetosphere Observation Satellites

*Takayuki Ono[1]
Graduate School of Science, Tohoku University[1]

Based on the Akebono satellite observations of 12 years and results by several near earth passages of magnetospheric satellites, plasmasphere has been shown as an active and very variable plasma environment than it had been understood. Strom time plasmasphere reveals a dramatic change of the structure named as 'Donkey ear plasmasphere structure' associated with generation of strong electrostatic as well as electromagnetic plasma waves. To understand the dynamic behavior, multi satellite observation is needed to resolve spatial and time variation. Present paper gives a proposal of plasmasphere observation by using a small satellites launched within a period of CAWSES project planned by SCOSTEP.

1.はじめに
 あけぼの衛星観測の継続の結果、プラズマ圏・内部磁気圏の描像 として、これまで考慮されることの無かった、そのダイナミックな 変動の様相が明らかにされている。この中にはあけぼの衛星観測の 初期から調べられている事柄として、放射線帯粒子分布の磁気嵐に 伴なう変動、"ロバの耳"現象と名付けられたプラズマ圏プラズマ分 布の大規模な変動、或いはプラズマ圏内に引き起こされている静電 的プラズマ波動の非線形相互作用を含む活動などがある。これらは 12年にわたるあけぼの衛星観測の結果を用いての統計的な描像や 磁気嵐等に関わる時間変動などが調べられており、内部磁気圏にお ける物理像を解明するための衛星観測計画が必要とされている。さ らに国際協同研究計画に対応する衛星計画も重要な課題となっている。 SCOSTEPにおける長期計画として現在、2003−2008年の間に行われ る国際協同研究計画(CAWSES)を実施する準備が進められている。現 在この計画の内容に対応できるあけぼの衛星、Geotail衛星ともに 稼働中ではあるが、いずれも10年の観測継続を経ており、2008年 に至るまでの協同研究プロジェクトに対応できる可能性は極めて少 なく、新たな衛星による磁気圏のモニタリング観測が不可欠である。

2. 内部磁気圏観測衛星の特徴と意義
 プラズマ圏における最近の研究のトピックスをもとに次の様な 衛星観測計画を実現することを提案したい。科学目的として「内部 磁気圏における高エネルギー粒子と熱プラズマのダイナミクスの理 解」を主題とする、内部磁気圏観測衛星を複数打ち上げる。ここで は複数の比較的小型衛星による連携観測により、プラズマ圏構造の 空間的な広がりと時間変動をとらえ、あけぼの衛星にて発見された 「ロバの耳」現象などプラズマ圏構造のダイナミックスに関する重 要課題を解明したい。内部磁気圏における衛星観測実現の鍵は、強 い放射線帯粒子による機器への影響をいかに押さえるかにかかって いるが、電子回路の耐放射線性能の評価についてはデータの充実や 評価方法の確立など近年の衛星や探査体ミッションにおいて経験が 深められつつある。低エネルギー粒子計測における観測手法の確立 などを含め、内部磁気圏衛星の開発は、将来の木星探査ミッション の実現には不可欠の基盤技術を確立することになり、科学目的だけ でなく、電子回路技術ならびに観測技術の大きく貢献することも期 待される。更に最近の小型衛星開発の動きは、低コストによる衛星 観測技術に結びつき、この複数の内部磁気圏衛星の実現は大きく将 来の宇宙観測にも貢献することが期待で知る。

3. 内部磁気圏衛の星案
 上記の計画実現に向けて、ここでは近地点500km、遠地点4-6Re程 度の衛星を赤道軌道面に2機、極軌道面に1機の衛星を配置すること を提案したい。この複数衛星を用いた連携観測によりプラズマ圏構 造の空間・時間変動を明らかにすることで、プラズマ構造を決定す るダイナミックスを解明する。従ってプラズマ速度分布関数、高エ ネルギー粒子、電場、磁場とともにプラズマ波動の周波数・波数ス ペクトルを得る観測装置を搭載する。更にプラズマ密度分布の詳細 を得るため衛星間の電波伝搬観測を行い、プラズマ密度の3次元構 造を明らかにすることが計画される。