ポーカーフラット (65 N)、稚内 (45 N)、および山川 (31 N) で観測された重力波の中・高緯度中間圏平均風への影響

*大山 伸一郎[1], 村山 泰啓[1], 五十嵐 喜良[1]

通信総合研究所[1]

Effects of gravity waves observed with MF radars at Poker Flat (65 N), Wakkanai (45 N), and Yamagawa (31 N) on mesospheric mean winds

*Shin-ichiro Oyama[1] ,Yasuhiro Murayama [1]
Kiyoshi Igarashi [1]
Communications Research Laboratory[1]

One of the fundamental mechanisms in mesospheric dynamics is the meteorological concept of geographic balance. The combination between the pressure gradient caused by solar heating, the Coriolis force, and the momentum transfer due to wave breaking near the critical level provides an approximate balance in mesospheric winds. Temporal variations in gravity wave activities observed with three MF radars at Poker Flat, Alaska (65 N), Wakkanai (45 N), and Yamagawa (31 N) are not always consistent with those in the observed mean zonal winds, in particular late summer. Relations between the mean wind and the gravity wave activity appear to have latitudinal dependence. In this paper, we will show climatology of the mean wind and the gravity wave activity using data obtained from the three MF radars in 1998-2001.

アラスカ・ポーカーフラット(65 N、147 W)、稚内 (45 N、142 E)、および山川(31 N、131 E)に設置された分反射 レーダで同時観測された、中間圏高度(60−100 km)における中性 風速度の季節変動について議論する。特に、3観測地点の緯度差を 利用し、平均風、プラネタリ波、潮汐、および重力波といった中層 大気力学を特徴付けるパラメータの緯度依存性に着目する。
中間圏高度では、全球的な気圧傾度力、コリオリ力、および重力波 に伴う運動量輸送が平均風に大きな影響を与える。その結果、平均 風の東西成分は夏期に西向き、冬期に東向きが卓越する。夏期には、 下層大気で発生した伝搬性重力波がもたらす運動量輸送により全球 的な気圧傾度力とコリオリ力のみのベクトル和とは逆方向に大気は 加速され、高度80−90 kmに東西風の弱い層が生じる。南北風は力 学バランスを保存するために、その高度領域で南向き成分が卓越す る。1998―2001年にポーカーフラット、稚内、および山川で観測さ れた中間圏中性風の平均風は第一近似的には、上記のような単純な 力学バランスで説明される。この現象はCIRAモデルで計算された1ヶ 月平均値でも確認される。しかし、各観測サイトにおける平均風お よび重力波活動度の時間変動には、上記の力学バランスのみでは説 明されない構造が見られた。
ポーカーフラットでは、4−5月にかけて上部中間圏(90−95 km) の東西風が東向きから西向き、さらに東向きへと2ヶ月の間に風向 の反転を繰り返した。稚内では85−90 kmの東西風は類似した反転 を示した。しかし山川およびCIRAモデルではこの現象は確認されな かった。ポーカーフラットにおける重力波活動度は冬期に極大値を 持つ1年周期を示したが、稚内と山川では冬期と夏期に極大値をもつ 半年周期を示した。平均風と重力波活動度にはプラネタリ波を伴う 長周期変動が存在し、多くの場合、非常に複雑な相互作用をしてい ることが示唆された。
本講演では、ポーカーフラット、稚内、および山川で1998−2001年 に観測された中間圏平均風および重力波活動度の時間変化について 特徴を抑え、その相互作用および緯度依存性に関する議論を進める 予定である。