波形観測をベースとした宇宙プラズマ波動観測手法の研究

*藤原 亮介[1], 小嶋 浩嗣[1], 上田 義勝[1], 松本 紘[1]

京都大学宙空電波科学研究センター[1]

The study on the methods of the spece plasma wave observations based on waveform observations.

*Ryosuke Fujiwara[1] ,Hirotsugu Kojima [1]
Yoshikatsu Ueda [1],Hiroshi Matsumoto [1]
Radio Science Center for Space & Atmospere,Kyoto University[1]

The recent spacecraft observations show that the waveform observations are essential for the detailed analysis of the plasma wave phenomena in space plasmas. In the present paper we introduce two observation methods based on waveform observations.They are the interferometry receiver and the wave-particle correlator. The former has been onboard the SS-520-2 rocket experiment. It succeeded in obtaining the information on phase velocities and wavenumber vectors.The latter has the capability to calculate the cross-correlation between the observed waves and particles in the real-time base. In the present paper, we evaluate the results of the interferometry receiver onboard the SS-520-2 rocket experiment. Further, we discuss the design of the wave-particle correlator consulting the computer simulations.

これまでの宇宙観測ミッションにおいてのプラズマ波動観測は機器の 性能や地上への伝送容量などの制限によりスペクトル観測が主に行わ れてきた。しかし、よりミクロな物理的メカニズムの解析を行ってく 上では、波形観測が必要であり、近年の観測技術の向上によって徐々 に波形観測が行われるようになりつつある。 昨年の12月にノルウェーにおいて極域カスプ領域の観測のために SS-520-2号機ロケットが打ち上げられたが、それに搭載されたプラズ マ波動受信機PWAにおいては、DSPを用いたディジタル技術の導入によ る高時間分解能波形観測、高速周波数掃引スペクトル受信機、インタ ーフェロメトリ受信機などの新しい技術が導入され、良好な結果を得 ることに成功した。インターフェロメトリ受信機とは、2つのアンテナ から取得された波形データの相互相関を求めることにより、波動の伝 播方向や伝搬速度を求めることができる受信機である。その観測例を 図に示す。これらの観測の成功は将来の惑星観測ミッションにおいて も、波形観測やデジタル化による軽量化などにおいて、非常に重要な 意義をもつと考えられる。 しかし将来の惑星ミッションに向けて考えると、波形観測などにより 取得される総データ量は多くなっていくにもかかわらず、今回のロケ ット実験より大幅に伝送容量は少なくなることが考えられる。したが って、さらに伝送するデータを抑える技術や、不要なデータは送信し ないといったデータ判別などの効率の良い、かつミクロな現象を捉え られる観測技術の研究が必要不可欠であると考えられる。その一つの 技術としてWave-Particle Correlatorがあげられる。この Wave-Particle Correlatorは、欧米のミッションにおいて、すでに 様々なロケットや衛星に搭載されているが、日本ではまだ搭載された ロケットや衛星はない。この技術は、波形データと粒子データを用い て波動粒子相互作用を直接観測する機器である。静電波動による波動 粒子相互作用が起こっているところでは、粒子のバンチングが起こり、 その結果粒子の分布関数に起こる摂動を直接観測して相互作用の起こ っているエネルギーや周波数を求めるものであり、少ないデータで非 常に小さな空間を対象に測定するものである。また、このデータを用 いて波形観測のデータの効率化やデータ判別を行い、伝送量の少量化 ができるのではないかと考えている。本講演では、波形観測をベース とした観測手法である、先のSS-520-2ロケット実験において導入され たインターフェロメトリ受信機の考察と、次世代観測機用の Wave-Particle Correlatorの評価や設計について論じる。