有珠火山における電磁気観測(2)
*佐波 瑞恵[1], 西田 泰典[1], 茂木 透[1], 鈴木 敦生[1]
高倉 伸一[2], 松島 喜雄[2]
北海道大学[1]
産業技術総合研究所[2]
Electromagnetic Monitoring in Usu Volcano (2)
*Mizue Saba[1]
,Yasunori Nishida [1],Toru Mogi [1]
Atsuo Suzuki [1],Shinichi Takakura [2]
Nobuo Matsushima [2]
Hokkaido University[1]
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology[2]
We have carried out SP(self-potential) mappings and repeated
resistivity soundings after the 2000 eruption of the Usu volcano.
(1) SP anomaly(about +400mV in amplitude) over a major part
of Usu has not changed before and after the 2000 eruption. Superimposing
this major anomaly, a small-scale SP anomaly(about +50mV in amplitude)
has observed on the newly developed steaming ground arround the
Nishiyama crater.
(2)The Nishiyama steaming ground, associated with the formation
of fracture zones, is characterized by the low resistivity zone
below 10Ωm, showing the existance of the prentiful ionized hot
water.
北海道洞爺湖岸南部に位置する有珠火山は、2000年3月31日より西山
西山麓、金毘羅山で次々と噴火した。以来、全磁力観測、自然電位
の空間的分布及び時間的変化観測、西山地熱拡大域高密度電気探査
などの電磁気観測が続けられている。このうち、本発表では自然電
位分布観測と地熱拡大域高密度電気探査について、これまでの結果
を報告する。
(1)自然電位分布観測
火山では地熱兆候のある火口周辺でしばしば自然電位正異常がみら
れる。これは、火山地下の熱源により駆動された、熱水対流に伴う
界面導電効果が原因であると考えられており、火山地下における熱
水の挙動を知る方法として、研究が進められている。有珠火山にお
いては、2000年噴火以前、1983、1985、1987、1994年の4回、山体規
模の自然電位分布観測が行われている。それらによると、南西-北東
方向に約2km、南東-北西方向に約1.5kmに広がる楕円状のカルデラ内
で、最大400mV程度の正異常が広く分布している。2000年噴火後、同
様の自然電位観測を2000年10・11月、2001年6月に行ったが、カルデ
ラ内の約400mVの正異常は噴火後も同程度存在している。これに加え
、西山噴火域には、火口周辺と地熱域で振幅数10mVの正異常がみら
れた。この小規模正異常は、2000年10・11月と2001年6月では大きな
違いはみられていない。異常の規模が小さい原因としては、西山火
口地下の熱水活動の規模は、有珠本山に比べて小さいこと、西山火
口一帯は低比抵抗の粘土質火山噴出物に覆われており、電位異常が
明確に観測されにくいこと、の両者が考えられる。
(2)地熱拡大域高密度電気探査
西山火口周辺では、噴火活動に伴う地殻変動によってできた割れ目
沿いに地熱噴気帯が生成されている。現在も活動範囲が拡大してい
ることから、地下では活動的熱水系の存在が予想される。この活動
的熱水系の構造発達の推移をモニターするため、2000年12月、2001 年5月の2度にわたり、高密度電気探査を実施した。2000年12月の測
定は、地熱噴気帯のある割れ目にほぼ直交する方向に360mの測線を
とり、電極間隔約5mで、ダイポール・ダイポール配置とウェンナー配
置で総数731個のデータ取得した。そのデータを解釈するため、内田
(1993)による平滑化拘束二次元インバージョンを適用し、二次元の
比抵抗構造モデルを得た。その結果、地熱噴気帯では10Ωm以下の低
比抵抗層が深度10〜20m付近まで存在しており、高温あるいは熱水の
存在を示すものと考えられる。2001年6月の測定は、2000年12月と同
測線上において、測線長440m、電極間隔5mで、ダイポールダイポー
ル配置とエルトラン配置で行われ、総数2010個のデータを取得して
いる。