非線形マグネトコンベクションの 数値シミュレーション:コア・マントル境界条件の影響

*桜庭 中[1]

東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻[1]

Numerical simulations of nonlinear magnetoconvection: effects of core-mantle boundary conditions

*Ataru Sakuraba[1]
Department of Earth and Planetary Science, University of Tokyo[1]

Numerical simulations of thermally driven nonlinear magnetoconvection are carried out to study the fundamentals of rotating magnetohydrodynamics in the Earth's core. The model consists of a rapidly rotating fluid sphere permeated by an axial uniform magnetic field. The rotation rate and the intensity of the applied magnetic field are variable. The model permits lateral heterogeneity of thermal and electromagnetic boundary conditions at the base of the mantle. We describe numerical solutions with and without the lateral heterogeneity and discuss the effects of the boundary conditions on the dynamics in the Earth's core.

地球のコアのダイナミクスは,回転する球形の容器内の電磁流体力学 (MHD)によってよく記述することができる。とくに最大の関心事 である地磁気の生成機構(地球ダイナモ機構)を明らかにするために, 回転球形流体中の熱対流が駆動する自励MHDダイナモの数値シミュ レーションがひろくおこなわれている。自励ダイナモの数値シミュレー ションは,コアのダイナミクスを再現する最適な手法である(たとえ ば Buffett 2000)。自励ダイナモでは任意の磁場を初期条件として 与え,流れと磁場の連立方程式を解く。いっぽう初期条件の代わりに, 任意の磁場を境界条件として与えて同様の方程式を解くこともできる。 これをマグネトコンベクションという。マグネトコンベクションでは 磁場の影響をあらかじめ制御することができるので,回転系のMHD の基礎を研究するには都合のよい点が多い。

とくに一様磁場下で回転する球形電磁流体のマグネトコンベクション については,すでに線形および非線形の数値計算によって多くのこと がわかってきた(Sakuraba & Kono 2000;Sakuraba 2001; 桜庭 2001)。たとえばある条件のもとでは,軸四極子磁場を励起する ような軸対称の流れ場が生ずること,また弱磁場状態から強磁場状態 への転移が,赤道面における高気圧対流セルへの磁束の閉じ込めと関 係があることなどが新たにわかった。この定式化では,トロイダル磁 場を基本場とするような他の研究とは違い,磁気的な不安定が起こら ず,熱的な不安定によって対流運動が駆動されるというのが大きな特 徴のひとつである。

本研究では,一様磁場中のマグネトコンベクションの非線形計算をお こなった。これまでの研究と異なる点は,流体球の回転角速度が比較 的速い状況を再現していることである。具体的には粘性の効果をあら わす無次元数であるエクマン数を10のマイナス5乗かそれ以下に設 定する。また地球物理学的に興味のある,強磁場状態の解を選んで詳 細に解析する。

さらに本研究では,マントル最下部の熱的および電磁気的な水平不均 質がコアのダイナミクスに与える影響についても調べる。熱的な境界 条件の影響については,これまでにもいくつかの研究例がある(たと えば Yoshida & Hamano 1993;Olson & Glatzmaier 1996)。また 電磁気的な境界条件の影響については,とくに非線形マグネトコンベ クションの数値シミュレーションという手法ではまだ詳しく調べられ ていない。これら境界条件の影響についてはまだ解析中であるが,マ ントルの水平不均質による磁場の変形,またそれにともなう新たな不 安定現象などについて,いくつかの計算例をもとに議論するつもりで ある。