アラスカ州ポーカーフラットにおけるフーリエ変換型赤外分光計を用いた
大気微量成分の観測
*関 浩二[1], 笠井 康子[1], 村山 泰啓[1], 水谷 耕平[1]
Frank J. Murcray[2], William R. Simpson[3]
Steven A. Lloyd[4]
通信総合研究所[1]
デンバー大学[2]
アラスカ大学[3]
ジョンズホプキンス大学[4]
Observation of atmospheric trace species by Fourier transform infrared spectrometer at Poker Flat, Alaska
*Kouji Seki[1]
,Yasuko Kasai [1],Yasuhiro Murayama [1]
Kohei Mizutani [1],Frank J. Murcray [2]
William R. Simpson [3],Steven A. Lloyd [4]
Communications Research Laboratory[1]
University of Denver[2]
University of Alaska Fairbanks[3]
The Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory[4]
We observe atmospheric trace species by the FTIR at Poker Flat,
Alaska since July 1999. The FTIR measures the solar infrared
absorption spectrum with a spectral resolution of 0.0019 cm-1
and a spectral range of 750 - 4200 cm-1. The absorption spectrum
is used to derive total column amount and vertical profile of
trace species. The SFIT2 program developed by NIWA and NASA
Langley is applied to analysis of the spectra. Vertical profiles
of O3 derived from absorption spectra near 3044 cm-1 will be
reported at the meeting.
通信総合研究所(CRL)ではアラスカ域大気観測計画(アラ
スカプロジェクト)の一環としてポーカーフラット(65 N, 147 W)にフーリエ変換型赤外分光計(FTIR)を設置
している。このFTIR(ブルッカー社 120HR)は周波数
分解能0.0019 cm-1、観測周波数領域は750 - 4200 cm-1であり、1999年7月より太陽光を光源とした
大気微量成分の吸収スペクトルを観測している。フォワード法を
用いた解析により吸収スペクトルの吸収強度から大気微量成分の
気柱全量が求められる。また、スペクトルの圧力広がりを利用
したインバージョン法により大気微量成分濃度の高度
プロファイルを求めることが可能である。フォワード法および
インバージョン法としては、NIWA、NASAラングレー
研究所の開発したSFIT2プログラムを用いた。
今回、O3のスペクトル(中心周波数 3044.6754 cm-1)を
用いて初期的なインバージョンを行い高度プロファイルを求めた。
有為な情報が得られる高度の上限はスペクトルのドップラー広がり
により制限される。O3程度の質量の場合、ドップラー広がりが圧
力広がりを卓越するのは中心周波数〜3000 cm-1では23 km 程度、〜1000 cm-1の場合28 km程度である。また、高度の下限
はスペクトルのS/N比と解析に用いる周波数領域の幅により決ま
る。今回用いたスペクトルのドップラー広がりが0.0045 cm-1 程度である事から、観測の周波数分解能を0.0035 cm-1に設定
して積算回数を増やすことでS/N比を向上させた。また、解析に
用いた周波数幅は0.1 cm-1とした。O3の高度
プロファイルの中で有為な情報が得られるのは高度10 - 23 km程度であり、高度分解能は10 km程度であった。
2001年3月から4月にかけて米、加、日が参加して行われた
TOMS3-Fキャンペーンにおいて、TOMS、オゾンゾンデ、
ドブソン分光計等との相互検証実験を行った。SFIT2による
解析においてO3の先験的な高度プロファイル(アプリオリ)
としてオゾンゾンデ観測結果を用いた場合、TOMS3-F 期間中のO3の気柱全量は他の観測器による結果よりも数%低く
見積もられたが、同様の日変動の傾向を示した。また、アプリオリ
としてオゾンゾンデ観測プロファイルの1/10や1/20の量を
用いた場合、高度10 - 23 kmではいずれの場合も
インバージョン結果はオゾンゾンデ観測とファクター 3 - 5 の範囲内で一致した。このことは、今回解析に用いた観測
スペクトルに高度10 - 23 kmに対しての有為な情報が
含まれており、この高度領域でSFIT2によるインバージョン
が有効に働いていることを示唆している。
過去2年間分のFTIRスペクトルの中から比較的S/N比の
良いスペクトルを選別して、2000年4月17日から10月
21日までの191日間中21日分、2001年2月24日から8月
30日までの188日間中64日分のスペクトルについてSFIT2 によるO3の高度プロファイルの導出に成功した。現時点では
全スペクトルの処理の際に用いる気温・気圧データを固定して
いるため定量的な議論はできないが、解析結果は5月から
9月にかけての極域でのO3の減少傾向を定性的に再現
している。また、SFIT2による解析結果の気温・気圧
依存性についても検討を行ったので報告する。