グローバルMHDシミュレーションによるサブストームの発達過程の解析 及びKRM法による電離層パラメータとの比較

*篠原 学[1], 中田 裕之[1], 上出 洋介[1], 荻野 竜樹[1]

名古屋大学太陽地球環境研究所[1]

Time evolution of substorm by the global magnetohydrodynamic simulation and a comparison of ionospheric parameters with the KRM

*Manabu Shinohara[1] ,Hiroyuki Nakata [1],Yohsuke Kamide [1]
Tatsuki Ogino [1]
Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University[1]

The time evolution of substorm is obtained by using the 3-dimensions magnetohydrodynamic model [Ogino et al., 1992] when the interplanetary magnetic field turns from northward to southward. Three different northward and three different southward IMF conditions are used.
The average patterns of ionospheric parameters for five substorm phases are determined by using the KRM magnetogram-inversion algorithm [Kamide et al., 1996]. These observational and simulation results are compared.

 太陽風中に異なる大きさのIMFを与え、global MHD simulationに よりサブストームの発達過程を調べた。IMFを北向き、Bz=2.5、 5.0、10.0nTの3つの条件を初期状態として用い、安定した磁気圏を 作った後にIMFを南向きに反転させ、初期状態それぞれに対し Bz=-2.5、-5.0、-10.0nTの3つの値について時間発展を調べた。例 えば、BZ=5.0nTから-2.5、-5.0、-10.0nTへ変化させた場合、サブ ストームのexpansionはそれぞれ90、70、50分後に起こり、130、 110、80分後に擾乱はピークに達した。また、初期状態Bz=2.5、 5.0、10.0nTから、Bz=-5.0 nTへ変化させた場合は、サブストーム のexpansionはそれぞれ50、70、70分後に起き、擾乱のピークは 80、110、120分後に見られた。サブストームの進行は、IMFの初期 値、変化後の値に大きく依存する。
 また、磁気圏と極域電離圏を結ぶ、Region 1、2電流について simulationの結果から、電流の強度変化、分布の様子を調べた。 Region1、2電流の強度は基本的に南向きのIMFの強さに依存してい る。しかし、初期値である北向きIMFの大きさの違いが、小さい変 化だが最終的な安定状態にも差を生じさせていた。同じ南向きIMF 値を与えたsimulationの中でも、最初の北向きIMFが2.5nTだった 場合に、より強い電流が流れていた。時間変化はサブストームの 時間発展と強く関連しており、変化の様子はIMFの初期値、変化後 の値双方に依存している。
 更にglobal simulationの利点を生かし、Region1、2電流の空間 分布を磁気圏内で調べた。Region 1電流のうち、昼側高緯度磁気 圏で作られる成分は、IMFが南向きに変化した直後から強く流れ始 める。極域電離圏へ繋がるこの電流の励起領域は、IMFの値によっ て大きく変化し、サブストームの時間発展とも関連が見られる。 expansionの前後に最も広い領域から電離圏への電流の流れ込みが 見られ、その後はローカライズする傾向がある。電流強度も時間 的に大きく変化する。一方、磁気圏尾部と繋がるRegion1、2電流 は、サブストームのexpansion後に発達する。電離圏からこれらの 沿磁力線電流をたどると、磁気圏尾部の圧力勾配が分布する領域 に達する。ここは磁気圏尾部のリコネクション領域に近いため磁 場強度の変化が激しく、反磁性電流の発散が強く現れる。そして、 Region1、2電流へと繋がっている。IMFの条件の違いによるこれら の電流分布の違いについて議論する。
 最後に、Kamide-Richmond-Matsushita magnetogram-inversion algorithmによってKamide et al [JGR,1996]が複数のサブストーム イベントから求めた、Quiet、Growth、Expansion、Peak of substorm、Recoveryの5つのsubstorm phaseの極域電離層の平均的 な状態との比較を行う。沿磁力線電流、電離圏電気伝導度などの分 布を比較すると、simulationはKRMの観測結果よりも全体的に高緯 度側に構造が分布しており、空間的広がりが小さく見えている。