インドネシアでのOHイメージャによる大気重力波観測

*青野 友和[1], 中村 卓司[1], 津田 敏隆[1]
Adi S. Salatun[2], A. Gunawan Admiranto[2]
Effendy Achmad[2]

京都大学宙空電波科学研究センター[1]
National institute of Aeronautics and Space of Indonesia[2]

Observation of gravity waves by OH airglow imager in Indonesia

*Tomokazu Aono[1] ,Takuji Nakamura [1],Toshitaka Tsuda [1]
Adi S. Salatun [2],A. Gunawan Admiranto [2]
Effendy Achmad [2]
Radio Science Center for Space & Atmospere, Kyoto university[1]
National institute of Aeronautics and Space of Indonesia[2]

We installed an OH imager and started observation in Indonesia in September, 2000. Between September 21 and May 20, 140 days of data are collected. From 24 night clear sky images 34 gravity wave events have been detected. We found that horizontal propagation direction was mainly southward, but in Dec-Feb, it was mainly eastward. We also found that horizontal phase velocities were distributed between 40 and 80 m/s, which was slightly larger than observed in Shigaraki. In Dec-Feb, the phase velocities were slightly smaller. Wavelengths and observed pariods were distributed mainly 10 km - 40 km and 5 min - 10 min, respectively, which is similar to the results in Shigaraki.

中層大気中では上方に伝搬する短周期重力波が大気の下層から上層 へのエネルギーや運動量輸送に大きな役割を担っていると言われて おり、それらを観測的に解明することが重要な課題となっている。 。短周期重力波を水平伝搬特性を含めて詳細に観測できるイメージ ャ観測は近年用いられるようになってきた有力な観測手段である。 これは、中間圏界面付近で大気が自発的に発光する夜間大気光を フィルタのついた高感度CCDカメラで撮像するもので、大気発光層 内を重力波が通過する時に発光層の発光強度が変化する様子から 重力波を観測するものである。中緯度では、信楽での長期観測 による重力波伝搬方向の季節変化の観測(Nakamura et al., 1999) を皮切りに最近多くの観測例が報告されているが、もっとも重力波 の励起が活発であると考えている赤道域では長期の観測結果は報告 されていない。そこで、京都大学宙空電波科学研究センターでは、 信楽で用いていたOH広角イメージャを赤道域インドネシアに設置 して赤道大気重力波の特性を観測することを計画した。 イメージャは、熱帯での使用を考慮して冷却効率のよい小型 エンクロージャを作成し、また制御PCをWindowsソフトウエアに 変更して、遠隔地からのネットワーク制御も可能なシステムと した。これらの改良を加えたシステムは、ジャワ島西ジャワ州 バンドンの郊外にあるインドネシア航空宇宙庁(LAPAN)のSumedang 太陽・電離層観測所(南緯6.9度、東経107.9度)に2000年9月21日 に設置され自動観測を開始した。2001年5月20日までの間に140日 の観測がなされ、雲のない24晩のデータから34例の重力波の イベントを観測することが出来た。これらの水平伝搬方向は南方向 が多数を占めるが、12月から2月に関しては東方向が卓越していた。 また位相速度に関しては、全体としては40m/sから80m/sを中心 として分布しており、中緯度信楽での同じイメージャ観測の結果 と比較してやや大きいものである。また12月から2月の期間は他の 期間と比較してやや小さいものとなっていた。水平波長は10m/s から40m/s、観測周期は5分から10分を中心に分布していた。 これらは中緯度とほぼ同じ結果であった。水平伝搬方向の季節変化 の要因としては、中層大気平均風でのフィルター、ダクト伝搬 による選択性、励起源の分布などが考えられているが、低緯度では 中層大気平均風や潮汐振幅が小さいことから、励起源分布と その変化が水平伝搬方向の季節変化をもたらしているのではないか と考慮している。この点を検証するために、GMS衛星の雲画像と 比較することで、雲の分布すなわち積雲対流活動の分布が水平伝搬 方向に影響を及ぼすことを確認した。今後、衛星観測データなどを 活用しより現実に近い風系を用いることで、これらをさらに精度 よく検証する予定である。