非等方プラズマの熱力学
*中村 匡[1]
福井県立大学[1]
Thermodynamics of anisotropic plasmas
*Tadas K. Nakamura[1]
Fukui Prefectural University[1]
A theory of thermodynamics has been derived for magnetized anisotropic
plasmas, which are often found in the space. Thermodynamical
quantities, such as entropy or free energy, are defined based
on the Maximum Entropy Principle. Applications to the space plasma
environment will be discussed.
宇宙空間プラズマ中では,粒子間衝突頻度が無
視できるため,微視的には局所平衡を仮定した流
体的アプローチは有効ではない。しかし,巨視的
な現象についてMHD的な記述が可能な場合も多く
みられるという事実は,局所平衡の仮定が巨視的
には有効であることを示唆している。これは,微
視的なプラズマ波動が2体衝突にかわって,プラ
ズマの緩和を進めるためだと考えられている。
もし,局所的にプラズマが熱平衡状態に達する
とすれば,その局所的な挙動は熱力学によって記
述されるはずで,事実,熱力学にもとづいたアプ
ローチが成果をあげている。
しかし,宇宙空間プラズマでは局所的な熱平衡
からずれた分布もしばしば観測される。その典型
的な例が非等方分布であろう。磁化プラズマの場
合,緩和をすすめるプラズマ波動は磁力線に沿う
方向と,それに垂直な方向で性質が異なるので,
緩和が熱平衡状態に至る前のかなりの時間,温度
異方性をもつ分布が存在し得る。その場合でも,
磁力線に垂直・平衡のそれぞれの方向の波動によ
る緩和時間が充分短いとすれば,それぞれの方向
にはある種の「熱平衡」にあると考えられる。
本講演では最大エントロピー原理に基づいて
このような非等方プラズマの熱力学がどのような
ものになるかを考える。講演では,たとえば,
・非等方プラズマの場合,垂直方向と平衡方向の
2つの温度が存在するが,エントロピーも2つあ
るのだろうか?
・その場合の自由エネルギーはどのようになるの
か
というような疑問に答えていくことによって,
この問題に対する理解を深めるとともに,宇宙
空間プラズマへの応用についても言及する。