太陽風の extreme condition に対する高緯度電離圏ポテンシャル
*田口 聡[1], 西村 瞳[1]
電気通信大学[1]
High-latitude ionospheric potential for extreme solar wind conditions
*Satoshi Taguchi[1]
,Hitomi Nishimura [1]
Univ. of Electro-Communications[1]
Response of the high-latitude ionospheric potential to changes
in IMF for extreme solar wind conditions has been examined.
We constructed empirical potential models that can represent
situations for usual solar wind conditions using DE 2 potential
data, and compared the models with DE 2 observations for extreme
solar wind conditions. The comparison indicates that response
for extreme solar wind conditions is not a linear extrapolation
of the one for standard solar wind conditions. Details of the
response curve for each local time sector are presented, and
contribution of parameters that are not included in the model
is discussed.
地球近傍での惑星間空間磁場 (IMF) は、太陽における CME などの
発生に
伴い、数10 nT を超える大きな値をとることがある。この状況において、
極域電離圏では100 kV を超えるポテンシャル差がしばしば生じる。こ
のような大きなポテンシャルについては、その固有の太陽風応答特性を
統計的に明らかにするほどの観測例がない。小さい値の IMF から
大きい IMF に
わたってほぼ一定の線形的な応答関係が存在することを認める場合が多
い。実際、この種のさまざまな線形応答の関係を用いることにより、我々
はこれまで太陽風パラメタを入力とした極域全体にわたる経験的ポテンシ
ャル分布モデルを構築してきた。太陽風の extreme conditions に
対して
正確なポテンシャル分布を求めることは、宇宙天気の観点から特に重要で
ある。本研究では、そのような太陽風の条件に対する極域電離圏ポテン
シャル応答について、より現実的な関係を見出すことを目的とする。
この問題に対する我々のアプローチは、標準的な太陽風条件のポテンシ
ャルデータのみで分布モデルを作成し、そのモデル結果と extreme conditions のイベントの観測値とを比較し、その差異を評価する方法
をとる。DE 2 衛星の約2500 の軌道のポテンシャルデータのうち、まず
ノンサブストーム時のデータを IMF の Y-Z 面の大きさ(By-z)とクロ
ックアングルの1時間
値について分類したところ、全ローカルタイムをカバーする充分な
データが得られているのは、By-z が10 nT 未満の時であることがわか
った。これをもとに我々は、クロックアングル別に10 nT 未満の By-z に対して極域全体のポテンシャルモデルを構築した。ポテンシャルの大
きさや位置に関して IMF の線形的な関係は仮定せず、対応するそれぞれ
の太陽風条件における平均値モデルを作成した。モデルの具体的な構築
には、これまで我々が進めてきたポテンシャルの極値とゼロ点の情報を
もとに極域全体にスプライン法を使って内挿する方法を用いた。
作成されたモデルポテンシャルの極値の大きさやその位置の緯度の変化
を By-z の観点から調べると、10 nT 程度まではある一定の線形関係
が存在しているようにみえる。By-z の1時間値が20 nT を超えるも
のを extreme conditions とみなし、その条件の DE 2 のポテンシャル
観測と、20 nT を超える同じ By-z 値を入力することで得られる
“外挿”
ポテンシャルモデル分布とを比較した。その結果、ポテンシャル極値の
大きさについて、外挿モデルは観測値より大きい値を示すことが多く、
過大評価となることがわかった。すなわち、extreme solar wind conditions に対するポテンシャル極値の大きさの応答は、標準的な
IMFに対するものと同じではない。ポテンシャルの極値の緯度に関し
ては、小さい By-z からより大きなBy-z にまで、ひとつの線形応答
関係モデルが有効である傾向が見られた。これらの傾向は、サブス
トーム時のデータに基づくモデルにおいても認められた。ローカル
タイム別の詳細な応答関係を示し、モデルに導入していない太陽風
密度、地球ダイポールの傾きの寄与についても議論する。