南極周回気球(PPB)による磁場観測計画

遠山 文雄[1], *浦谷 俊輔[1], 佐藤 夏雄[2], 門倉 昭[2]
新海 雄一[2],PPB磁場観測グループ

東海大学工学部航空宇宙学科[1]
極地研究所[2]

Geomagnetic Field Observation by Polar Patrol Balloons in Antarctica 

Fumio Tohyama[1] ,*Shunsuke Uratani [1],Natsuo Satou [2]
Akira Kadokura [2],Yuichi Shinkai [2]
PPB Geomagnetic Field Observation Group
School of Engineering,Tokai University [1]
National Institute of Polar Research[2]

A balloon would go around the Antarctica that is called Polar Patrol Balloon (PPB) if it is taken off from ground for the period of the stable wind. The use of a couple of balloons is very effective for an observation of geomagnetic pulsations and geoelectric field detection in the low altitude and a long time observations in the polar region. We had four times geomagnetic observations by PPBs from 1990 together with NIPR and ISAS. In the next experiment that will be held in 2002, we will design a new measurement system of 3-component geomagnetic field by a fluxgate magnetometer on a balloon.
In this presentation, we describe the new system and introduce the next PPB observation.

1.はじめに
 安定した風の吹く期間に気球を放球すると、2,3週間で南極大 陸を一周することができ、極域での低高度・長時間観測が行われて きた.この気球は,南極周回気球(Polar Patrol Balloon;PPB )と呼ばれ、極地研究所・宇宙科学研究所を中心にこれまで1990年 から数回行われてきた。PPB1,2号機では、プロトン磁力計に よる全磁力測定を行い、磁気異常の解析が行われた。またPPB4 ,5号機では、プロトン磁力計の他に気球では初めてフラックスゲ ート磁力計による三成分磁場観測が行なわれ、約10nT精度の磁場の 成分測定ができた。
 地磁気脈動の伝播特性の解明や電磁場現象の空間的・時間的比較 を行うためには複数機のPPBおよび地上局と衛星による同時観測 が重要である。
 2002年12月から2003年1月にかけての第44次越冬隊による実験 では、PPB3機での電磁場観測が予定されており、フラックスゲ ート磁力計による三成分磁気脈動観測を行う。これまでの実験に比 べ、格段の測定向上を目指す。測定サンプリング周期はこれまでの 30秒から1秒へ、測定感度を2nTから0.2nT程度に上げる。

2.磁力計システムの概要
 フラックスゲート磁力計による三成分磁場を約1Hzのサンプリン グで感度約0.2nTで計測する。センサ方向の姿勢は、太陽センサと 傾斜計センサにより決定する。太陽センサは、30°毎に1mm幅のス リットから入射する太陽光をフォトダイオードで検知し、パルスで 出力する。磁場計測のセットパルスから太陽光パルスまでの時間を 計測し、信号として出力することにより、磁場データがどのような センサ姿勢にあるかをデータ解析して磁場成分を求める。傾斜計出 力も1Hzサンプリングで、相対角度1/100°以下の変化を検出する 。センサはゴンドラ上面に取り付ける。またフラックスゲート磁力 計センサ,太陽センサおよび傾斜計センサの軸方向はゴンドラ座標 系に一致させて取り付ける。

3.期待される成果
 PPB3機を使った観測によって以下の成果が期待されている。 (1) 磁場三成分の変動観測を南極大陸周回に沿って多点同時観 測を行い、衛星およびsuperDARNなどの地上観測データとの総合的 観測から、磁場脈動の伝播特性,磁気圏と電離圏との電磁場相互作 用などの解明
(2)磁気異常を検出し、地下の電磁気的構造の解明
(3)南極広域の磁場データの蓄積による標準地磁気モデルの評価
(4)磁場三成分の測定方法と解析システムの確立