ELF帯地震電磁放射の統計的判別処理結果の評価

*朝倉 広充[1], 冨澤 一郎[1]

電気通信大学菅平宇宙電波観測所[1]

Evaluation of a statistical detection procedure for
ELF electromagnetic phenomena associated with earthquakes

*Hiromitu Asakura[1] ,Ichiro Tomizawa [1]
Sugadaira space radio observatory ,The university of electro-communications[1]

We have been developing a detection system for ELF electromagnetic phenomena associated with earthquakes(EQs). Based on a statistical detection method, some intense events are picked up as extraordinary ones. Those events are examined both by locating and by spectral characteristics. Artifical noises or atmospherics can be rejected by using other information. Residual events should be correlated with EQ events. Applying the statistical detection procedure to the two year observation data, sixteen extraordinary intense events were detected as possible EQ-related events. It is, however, concluded that the events are not related to EQ because no event showed relationship both to time and direction of EQs.

 電通大学菅平宇宙電波観測所では、1997年よりELF帯における地震電磁放射判別システムを構築し、異常電磁放射検出の試みを開始した[1]。その後、地震との関連を検証できるシステムへの改善を継続している。本報告では、地震電磁放射判別アルゴリズム構築、長期間観測データを用いた統計的解析及びそれらの結果について述べる。  いまだ地震に伴う電磁放射現象の発生機構や伝搬機構は明確にされていない。そのため明確な判別アルゴリズムは解っていない。そこで、我々は次善の判別方法として統計的検出方法を用い、水平磁界強度にしきい値を置き、これを超えるような現象を異常として抽出してきた。この場合に、しきい値を下げることにより、自然雑音や人工雑音を異常とする、誤り検出の確率が増えてしまう。そこで、抽出したデータに関して、地震との関連が検証できるような判別基準を追加し解析を行った。具体的には、水平磁界強度対垂直磁界強度比(Hh/Hv)が放射源からの伝搬距離・経路によって特定の値を持つことから、抽出したデータにおけるHh/Hvが短時間で同程度の値を示しているか、複数観測点で到来方向は一致しているかを考慮した。更に、Galejsの理論[2]を基に、各観測点での伝搬距離が、算出した到来方向から各観測点までの距離と同程度の値になるかにより検証した。

 本報告では、1999年1月1日〜2000年12月31日までの観測データを用いて解析を行った。この期間中で3観測点で力武の検出限界を満たす地震は、13事例存在した。狭帯域データでは、36Hzの観測データに関して、しきい値を(平均値+2×標準偏差)に置き判別を試み、16個の異常現象を抽出した。この16個に関して、観測日付近で力武の検出限界[3]を越えるような地震が発生し、抽出されたデータの到来方向が地震発生位置方向を示しているか調査したところ、震源方向とは異なった方向を示しているか、観測日付近で地震が発生していないかったため、地震との関連性はないものと判断した。
 広帯域データでは、力武の検出限界条件[3]を満たすような地震の発生時刻付近で、多数のパルス現象が観測されているデータが数例発見された。そこで、これらの現象に関して到来方向を調査したところ、震源とは異なる方向を示していたため、地震との関連はないと判断した。

 本報告で用いた地震と関連のある電磁界放射判別アルゴリズムでは、2年間のデータから、地震と関連のある電磁界データを抽出することができなかった。今後、狭帯域データに関しては、判別基準を更に下げて、微弱な強度増加現象の判別を行う必要がある。この場合、多量のデータを扱うため、地震電磁放射判別アルゴリズムの構築を進めていく予定である。


[1]齊藤真二・勝又康夫・冨澤一郎 : 地球惑星科学関連学会1998年合同大会, p.sh-p002, 1998.
[2]J. Galejs : Terrestrial Propagation of Long Electromagnetic Waves, Pergamon press, 1972.
[3]T. Rikitake : J.Geomag. Geoelectr., 49,1153-1163, 1997.