交通量の多い道路沿いの土壌の磁化率

*松田 岳之[1], 鳥居 雅之[1]

岡山理科大学生物地球システム学科[1]

Magnetic susceptibility of surface soil along the heavy traffic road

*Takeshi Matsuda[1] ,Masayuki Torii [1]
Okayam University of Science[1]

Magnetic susceptibility survey was carried out in order to estimate environmental pollution caused by heavy road traffic along the Route 2, east of Okayama City. Susceptibility values show exponential decay with the distance from the edge of road pavement. Soil samples were collected by using soil sampler and their magnetic property were also tested.

 交通量の多い道路に沿った地域は,車体や積荷あるいは道路などの人工的物質に よって汚染されていると予想される.このような場合の汚染調査は試料を採取して化 学的分析によって行われるのが一般的である.最近は磁気的な手法も一部で試みられ ている(Hoffman et al., 1999).磁気的な手法が汚染調査になぜ有効かというと,交 通に関係して排出される物質には一般的に鉄が含まれており,それらの鉄は酸化物な どの磁性の強い物質となっている場合が多いからである.さらに鉄の酸化物が他の重 金属をよく吸着することも,鉄化合物の分布を調べることの意味を高めている.鉄化 合物の分布状態を知るためには,地表面の磁化もしくは磁化率を測定することによっ て可能となる.なかでも,磁化率の測定はその場測定が可能であり,しかも測定に必 用な時間が短かく簡単なために,短期間で広範囲に測定ができる.  国道2号線は,岡山県内ではもっとも交通量の多い道路(~4000台/日)である. 岡山市の東約20kmの邑久郡長船町(34°43'8.1"N, 134°6'17.9"E)には,国道と 吉井川に挟まれた比較的広い未利用の草地があり,一部斜面ではあるが調査に適して いると判断した.道路に対して直角に長さ32mの測線を1m間隔に8本設定し,各測 線にそって50cm毎に磁化率を測定した.測定にはBartington MS2磁化率計のループ 型センサー(MS2D: 直径185mm)とプローブ型センサー(MS2F: 直径15mm)を用 いた.なおそれぞれのセンサーの可探深度は直径程度である.今回はプローブ型セン サーの方が大きめの測定値を与えることが分かった.これは測定地点に草が密生して いるため,大きなループ型センサーでは表面に密着できないことと,磁性物質がごく 表面に濃集しているためであることが確かめられた.ある測線に沿ってはソイルサン プラーを用いて,深さ50cmまでの土壌を採取して磁気的特性を測定した.  主な結果は,アスファルトとコンクリートの舗装部分は3E-6 SI程度の磁化率しか 示さない.舗装部分をはずれた最初の地点に最大2.9E-5 SI程度のピークがあり,以 後道路から離れるに従って指数関数的に減少する.道路より18m離れた地点の平均磁 化率は7.6E-6となる.このパターンは汚染源は道路であり,かつ汚染物質を蓄積で きる土壌がないと磁化率は上昇しないことが明確に示されている.草地のなかには はっきりした轍があるため,そこでの磁化率の上昇が予想されたが,とくに顕著では なかった.かなりの交通量がないと磁化率が上昇するほど磁性の大きな物質は蓄積し ないようである.  一番西側の測線に沿って,ソイルサンプラーを用いて,深さ50cmまでの土壌を採 取し,磁化率と飽和等温残留磁化などを測定した.その結果,地表面に磁性物質が濃 集していると思われるのは,道路縁石から3m程度までであり,それ以上離れると地 表と深度50cmの試料の差は有意でなくなる.またS-ratioから判断すると主な磁性鉱 物はマグネタイトと思われるが,より詳しい検討が必要である.