FPIにより観測されたオーロラ活動に伴う熱圏鉛直風変動
*坂野井 健[1], 福西 浩[1], 岡野 章一[1]
東北大学大学院理学研究科[1]
Thermospheric vertical wind variations associated with auroral activities obtained from FPI observations
*Takeshi Sakanoi[1]
,Hiroshi Fukunishi [1],Shoichi Okano [1]
Graduate School of Science, Tohoku University[1]
In order to study the generation of thermospheric vertical winds
associated with auroral activity, we have examined neutral wind
data obtained by a Fabry-Perot Doppler Imager at Syowa station,
Antarctica (66.4 deg. MLAT) on 20 nights in 1996. From case studies,
it is found that upward winds sometimes occurred in the poleward
region of aurora (5 cases out of 8 events), although the velocities
were rather small (~20 m/s in the E-region, and 20-40 m/s in
the F-region) compared with those reported in previous studies.
However, in most cases vertical winds and optical aurora showed
a complicated relationship. From a statistical study on 20 nights,
it is found that downward winds tend to occur in the post-midnight
sector. Further, we will discuss the relationship among vertical
and horizontal winds, and a heating region.
ディスクリートオーロラの高緯度側F領域において、150m/sを越える強
い鉛直風がしばしば観測されている。この鉛直風により大気組成変化が引
き起こされ、赤外冷却効率が変化する。このため、鉛直風は熱圏ダイナミ
クスに極めて重要な役割を果たす。このような強度の大きい鉛直風駆動メ
カニズムには、ジュール加熱・粒子加熱や水平風の収束・発散があげられ
るが、定量的な説明が極めて難しい。また、近年熱圏水平風とオーロラ近
傍の加熱領域との相互作用により、鉛直風が形成されることが計算機シミ
ュレーションにより指摘されている。
本研究では、オーロラ現象に伴う鉛直風駆動メカニズムを明らかにする
ことを目的とし、鉛直風とオーロラ発光との空間的な対応関係を調べ
た。また、鉛直風速度変動幅を求めることにより、過去のFPI観測精度を
検証した。さらに、鉛直風と温度変動や地磁気観測データとの詳細な比較
を実施した。
解析は、1996年4月−10月の期間の20晩における南極昭和基地FPIの557 .7 nmと630 nm観測データを用いて、E領域とF領域の鉛直風ならびに中性
大気温度変動を見積もった。それぞれの晩における鉛直風とオーロラ発光
等の時間変動の詳細な対応関係を調べたケーススタディから、以下の結果
が得られた。
・20晩中、100m/sを越す鉛直風イベントは無かったが、ブレイクアップ
時にオーロラ極側で鉛直風が見られた。(ブレイクアップ8例中5例。)
強度は630 nmで20 −40 m/s, 557.7 nmで20 m/s程度であった。
・オーロラオーバル低緯度側領域において、低緯度境界付近のオーロラが
変動する場合に、鉛直風が準周期的に変動する現象が4例見られた。その
変動幅は、 630 nm, 557.7 nmともに±20 m/s程度であった。
・鉛直風に対応する顕著な温度変化は見られなかった。
また、20晩の鉛直風の統計解析を以下にまとめる。
・鉛直風強度変動の発生頻度は、557.7 nm データでは±27 m/s, 630 nmデータでは±32 m/s以内に95%分布する。
・どのMLTセクターでも上昇流・下降流ともに発生するが、ポストミッド
ナイトセクターでは下降流が若干多い。
・ASYh依存性や、ローカルな磁気活動度依存性は特に見られなかった。
今回温度変動が小さかったことは、ジュール加熱が小さいことを示唆す
る。1996年は太陽極小期で、電離層電子密度は低かった。このため、ジュ
ール加熱が小さく、それにより引き起こされる鉛直風変動が小さかったの
かもしれない。また、これらの結果から、鉛直風、水平風と加熱領域の関
係について議論する。