昭和HFレーダーによる流星風観測

行松 彰[1], *堤 雅基[1]

国立極地研究所[1]

Application of Syowa HF radars to meteor wind observations

A. Sessai Yukimatu[1] ,*Masaki Tsutsumi [1]
National Institute of Polar Research[1]

Meteor wind observations with two HF radars at Syowa (69S, 39E), Antarctica are discussed. SuperDARN HF radars are mainly utilized for plasma drift measurements in polar F region. However, recent studies using those radars report that significant number of echoes are received from ionized meteor trails within the range of a few hundred km, and that they can be applied to wind measurements in the mesopause region.

2台の昭和基地HFレーダーはSuperDARNに属するレーダーで あり、HF帯の電波を用いてF層からの散乱エコーを受信し、 F層中のプラズマドリフトを探ることを主目的とする。 しかし最近の研究からSuperDARNレーダーの数百km以内の 近距離エコーには電離流星飛跡(細長い円柱状)からの寄与 がかなり大きいことが明らかにされ、中間圏界面付近の 中性風速観測への応用が議論されている。 このレーダーを用いた流星風観測には大きな利点がある。 SuperDARNレーダーは北極域・南極域に多数配置されて経度 方向を広くカバーしているため、すべてのレーダーを流星 観測に応用すれば、極域中間圏界面領域の平均風および 大気波動の経度方向の情報が得られる。 一方、技術的な問題点もある。まず距離分解能が悪く(30km 程度)高度決定精度が悪い、あるいは干渉計観測を行って いないレーダーの場合にはほとんど高度情報がないこと、が 第一にあげられる。またマルチパルス観測を行い自己相関 関数を記録することに特化しており、短時間のみ出現する 流星エコー観測には適していない。しかし、時系列情報を 取り出せれば、流星エコーの減衰時定数からある程度の高さ 情報が得られ、また流星エコーの出現した部分のみを用い たSN比の高い観測が期待できる。 我々は、HFレーダーの通常観測に影響を与えることなく 時系列データを取得して良質な流星エコー観測を行う方法を 開発中であり、開発された技術・ソフトウェアをSuperDARN community に広く提供することを考えている。すでに昭和 基地HFレーダーで試験データを取得し、多数の流星エコーを 確認している。また、この技術はまだ観測例の少ない南極 域のPMSEの観測にも応用できる可能性があり、検討中である。