海半球計画における地磁気観測

*歌田 久司[1], 清水 久芳[1]

東京大学地震研究所[1]

Geomagnetic observatories in the Ocean Hemisphere Network Project (OHP)

*Hisashi Utada[1] ,Hisayoshi Shimizu [1]
Earthquake Research Institute, University of Tokyo[1]

The Ocean Hemisphere Network Project (OHP) aims to study structure and dynamics of the Earth's deep interior by multidisciplinary geophysical observatories in the hemisphere centered by the Pacific ocean. Its electromagnetic component consists of long-term (nearly permanent) geomagnetic and geoelectric observatories, and supplementary mobile surveys. This paper reports efforts for geomagnetic observatory in the OHP.
The OHP magnetometer system is designed for a long-term observation with minimal requirements for maintenance (monthly visit to change disk, and absolute measurement once a year). It consists of a proton magnetometer and a three-component fluxgate magnetometer. This paper reports the result of test measurement at Kakioka, which showed baseline drifts of a few nT after correcting the temperature effect.

海半球観測ネットワーク計画(OHP)は,太平洋を中心とするい わゆる海半球に総合的地球物理観測網を展開して長期観測を行う ことにより,地球内部の構造とダイナミクスを解明することを目 的としている.計画の電磁気分野は,長期地磁気および地球電場 の観測所網と,機動的な長期観測とからなる.ここでは,OHPに おける長期地球磁場観測に関して報告する.
1996年以来,既存の地磁気観測所が少ない太平洋地域に観測 点を設置する努力が払われてきた.その結果,2001年度の OHPの終了時点までに,いわゆるOHP磁力計システム(Shimizu and Utada, 1999)を8ケ所の観測点に設置する事ができる.設 置場所は,ポンペイ(ミクロネシア連邦),キリチマチ(キリバ ス共和国),フアンカイヨ(ペルー),長春(中国),トンガタ プ(トンガ王国),南鳥島,モンテンルパ(フィリピン),マジ ュロ(マーシャル諸島共和国)である.
OHP磁力計システムは,最小限の保守(例えば記録媒体の交換が 月1回,絶対測定が年1回)によって長期観測が行えるような設 計がなされている.システムは,全磁力を測定するプロトン磁力 計と3成分を測定するフラックスゲート磁力計によって構成され る.3成分は,高感度(分解能0.01nT,ノイズレベル0.05nT, サンプリング1秒)で短周期磁場変動の解析に用いることができ, 超高層分野での利用も可能である.しかしながら,高感度なだけ ではOHPの目的のためには十分とは言えず,長期安定性が必要と される.良く知られているように,3成分のベースラインのドリ フトの主要原因は温度変化にあるとされる.OHPシステムでは, 温度の日変化の影響はフラックスゲートセンサーを埋設する事に より十分に小さくしている.さらに,現地に設置する前に温度係 数正確に決定することにより,長期的な温度変化による効果もセ ンサー内部に付属している温度計データを用いて補正が可能であ る.また,フラックスゲート自体はジンバルにのっているため, 土台の傾斜による影響は無視できる.以上により,設計上の長期 安定性は5nT/年程度になるものと推定した.そして,3年間 以上にわたる柿岡地磁気観測所における試験観測により,この性 能がほぼ実現できていることが明らかになった.したがって,人 工的磁場擾乱がないかぎり,年1回の絶対観測をするだけで,永 年変化を議論することも可能な長期観測を行う事ができることが 示された.