太陽コロナ磁場反転期における極域高速太陽風領域の消失/再出現

*横辺 篤史[1], 小島 正宣[1], 大見 智亮[1]
徳丸 宗利[1], 林 啓志[1], 藤木 謙一[1], 袴田 和幸[2]

名古屋大学太陽地球環境研究所[1]
中部大学工学部[2]

Disappearance and emergence of fast solar wind regions around the solar poles during this solar maximum

*Atsushi Yokobe[1] ,Masayoshi Kojima [1],Tomoaki Ohmi [1]
Munetoshi Tokumaru [1],Keiji Hayashi [1]
Ken-ichi Fujiki [1],Kazuyuki Hakamada [2]
Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University[1]
Department of Natural Science and Mathematics, Chubu University[2]

Interplanetary scintillation (IPS) data taken in years of 1998-2001 were analyzed to investigate solar wind structure change during this solar maximum phase. We apply the tomography technique to derive the synoptic map of the solar wind velocity from IPS data. High latitude fast wind disappeared at Carrington Rotations (CR) 1951- 1952, while polar coronal holes survived. This period was coincide with the start of the polar magnetic field annihilation/reversal caused by remarkable anti-polarity magnetic fluxes. Emergence of fast wind regions around the poles are recognized at CR 1977. Since the polar field reversal of this solar max. has already finished in CR 1977, it seems that the unipolarity regions have well developed in this period.

名古屋大学太陽地球環境研究所(STE研)において行っている惑星間 空間シンチレーション(IPS)を利用した太陽風速度の観測からは、 比較的短時間に太陽風の大規模構造を容易に得ることができる。し たがって、太陽活動極大期のようにコロナの構造が複雑かつ活発に 変化するような状況で、それに伴う太陽風速度構造の変化の様子を 調べるには非常に有力な手段である。さらに我々のグループによっ て開発された計算機トモグラフィー法により、高い空間分解能での 解析が可能である。本研究ではSTE研のIPS観測データにトモグラフ ィー法を適用して得られる太陽風速度のシノプティックマップを用 いて、今極大期における太陽風速度構造の変化を、主にコロナ磁場 との関連性について調べた。Ohmi et al. [2001]では前極大期のデ ータを用いて、極付近で見られた低速風と磁場構造の関係が詳細に 調べられているが、本研究では極域コロナホール起源の高速太陽風 に着目し、特に高緯度高速風領域の消失と再出現について報告する。 Carrington Rotation (CR) 1943(1998年末)までは、高速風が 両極の高緯度帯に分布している様子が確認されていた。この構造は 基本的には両極から張り出したコロナホール起源の高速風領域が 低緯度付近に分布するストリーマー上空の低速風帯をはさむ形で分布 する極小期のbimodal構造から太陽黒点の増加とともに発達してきた ものである。冬期の観測休止期間を挟んで1999年、CR 1948から CR 1950にかけての期間は極域に高速風領域が存在していたが、 CR 1951において北極側、続いてCR 1952に南極側の高速風領域が 相次いで消失していることがわかった。この時期、極域コロナ ホールの存在はNSO/Kitt Peak観測所のHe I 1083 nm 観測データ から確認されるが、ちょうど中緯度から極域への反極性磁気 フラックスの流入が顕著になり、極付近の単極性磁場領域での変化が 始まったタイミングと一致している。ちなみに消失以前の南側高速風 領域の北限はS60度付近で、この時期Ulyssesは未だ到達しておらず、Second Polar Pass で高速風領域への進入が観測されなかったことと この結果は一致している。その後、2000年を通して太陽風速度 構造は短時間での複雑な変化を示しつづけ、2001年に入りCR 1977に 極域の高速風領域が再出現したことが確認された。この間、コロナ中 の磁場構造は少し以前CR 1972辺りから磁場反転の終了に伴い、極域 の単極性磁場領域が安定化し、徐々に磁場強度も大きくなりつつ あった。 以上から、極域のコロナホールが高速風を吹き出すには条件があり 、一定の空間的広がりを持ちかつ単極性の磁場領域として構造が十 分安定した状態でなければならないことが推測される。この結果は コロナホールの空間的サイズとそこから発生する太陽風の速度に正 の相関があるというNolte et al. [1976]やNeugebauer [1994]の報 告を裏づけるものだが、講演ではより詳細にコロナ磁場構造の変化 の様子と太陽風速度構造の関連について議論する予定である。