Kelvin-Helmholtz不安定を介した異種プラズマの混合過程

*松本 洋介[1], 星野 真弘[1]

東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻[1]

Plasma mixing via Kelvin-Helmholtz instability

*Yosuke Matsumoto[1] ,Masahiro Hoshino [1]
Department of Earth and Planetary Science, University of Tokyo[1]

Transport mechanism of the solar wind plasma into the magnetosphere in the situation of northward IMF has been a hot topic in the space plasma physics. Recent obsevations suggest that the low latitude boudary layer is a candidate for a source of plasmas, where Kelvin-Helmholtz instability is unstable. In this context we have carried out full particle simulation of Kelvin-Helmholtz instability to understatnd the mixing process via plasma velocity shear layer. In the case of thin (one ion gyroradius) shear layer, electrons are widely diffused as compared to ions. We will discuss this process in detail with showing the heating mechanism for the electrons.

IMFが北向きの時の太陽風プラズマの磁気圏内への輸送過程の問題 は未だ決着の着いていない大きな問題であるが、この輸送過程の候 補の一つとして、Kelvin-Helmholtz不安定が挙げられている。 このKH不安定の成長が期待される低緯度境界面においてはしばしば 太陽風プラズマと磁気圏起源と思われるプラズマの2成分が同時に 観測されることからも、KH不安定は輸送過程に大きな役割を果たし ている可能性がある。

K-H不安定は流体不安定であるが、プラズマ輸送という観点では粒 子の運動論的効果を考慮する必要がある。このような観点で、過去 にはhybridシミュレーション、full particleシミュレーショ ンがなされている。Fujimoto and Terasawa [1994,1995]に よれば、一様背景場の場合はK-H不安定の非線形発展による構造の 変化に伴って、イオンの有限ラーマー半径の効果により効率的にイ オンが拡散するという結果が得られている。

我々はこうしたプラズマの拡散という観点で、KH不安定についてイ オン、電子共に粒子として扱ったfull particle simulationを かつてない空間精度の下、計算を行なった。電子を粒子として扱う ことによって、ハイブリッドシミュレーションの計算では扱うこと のできなかった電子の拡散の問題をも考えることができる。また、 空間精度を上げることによってイオンと電子の運動の差による運動 量交換といったミクロな相互作用によってマクロスケールへの拡散 にどう影響させるかについて理解することを目的としている。これ までの計算の結果、

1、境界層の厚みがイオンのラーマー半径と同じ場合、電子はイオ ンに比べて広い範囲で拡散が起こることがわかった。これは、 電子がKH非線形発展の過程で加熱されるためであると思われる。

2、しかし、速度境界層の厚みがイオンのラーマー半径に比べて厚 い場合(イオンのラーマー半径の10倍と4倍)、ハイブリッド 計算の結果と同じような過程で電子はイオンと共に混合するこ とがわかった。この結果では、混合はKH不安定の非線形発展に 伴う構造の変化によって、系の特徴的スケールが小さくなった ため起こる。

本講演では、境界層の厚みによってプラズマの拡散がイオン、電子 それぞれどのような過程で行なわれるかを示す。また、その過程で の電子と静電波との相互作用による加熱機構について詳しく紹介す る。