地球電磁気・
地球惑星圏学会について
SGEPSS -Society of Geomagnetism and Earth, Planetary and Space Sciences-

私たち、地球電磁気・地球惑星圏学会(Society of Geomagnetism and Earth, Planetary and Space Sciences)は、地球の中心核から宇宙の彼方にわたる領域を研究対象とする科学者(教育関係者・学生)が集まる学術団体です。このWebページでは、私たちの研究・活動を一般の皆様に知っていただくために、学会の研究対象となる領域を紹介していきます。

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地球の真ん中から宇宙まで

(C) 2021 SGEPSS / CC BY-NC-SA 4.0 地球電磁気・地球惑星圏学会が扱う対象には、地球の中心核から固体地球、海洋、大気圏、電離圏、磁気圏、惑星間空間、太陽大気、太陽系諸天体、さらには太陽圏の彼方に至る領域が含まれています。これらの領域で発生するさまざまな現象を、電磁気学、電磁流体力学、プラズマ物理学、光化学といった共通の言葉(物理・化学)で議論します。研究手法としても、地上や海底での電磁気学的観測、地質・鉱物学的分析から、超高層大気・宇宙空間を飛ぶ人工衛星などの直接観測、大型レーダーや分光機器によるリモートセンシング、スーパーコンピュータによる数値実験など、さまざまな方法を利用しています。本学会の研究は、新しい測定技術の開発、資源探査や防災、人工衛星や宇宙ステーションなどによる宇宙空間利用に役立つとともに、地球やその大気・生命の誕生と進化の仕組みを明らかにし、未来の地球環境を予測するための基礎知識となります。


地球ダイナモ 〜地磁気の源〜
Geomagnetic dynamo

(C) 2021 SGEPSS / CC BY-NC-SA 4.0 地球には固有の磁場-地球磁場-があります。地球上のほとんどの場所で 方位磁針のN極が北の方を示すことから、地球自体が一つの大きな磁石になっていることがわかります。地球磁場は宇宙線や太陽からの高エネルギー粒子が地球へ侵入することを防いでくれています。それゆえに地球には生命が存在できるとも言えます。では、なぜ地球に磁場があるのでしょうか? 20世紀を代表する偉大な物理学者であるアインシュタイン博士は、特殊相対性理論を発表した後、物理学において最も重要で未解決の問題の一つとして地球磁場の起源を挙げたとも言われています。地球の内部は非常に高温で、永久磁石としての性質を保つことができません。しかし、地球深部には電気が流れやすい流体(電磁流体)があり、発電機(ダイナモ)としての作用が働くために電流が流れ、その電流が磁場を作っている(= 電磁石)と考えられています。 地球形成後の溶融状態において、鉄は岩石より密度が高いために地球の中心に落ち込み、核(コア)の形成が始まりました。地球が冷えるにしたがって液体のコア内で熱対流が生じます。さらに冷えると、圧力が高い地球中心部に固体の内核ができ始め、外側にある液体の外核と分離し始めました。内核固化の際には外核の最下部に鉄よりも軽い成分が残されるため、これを浮力源とした対流(組成対流)も生じます。生じた対流は地球の自転の影響によって自転軸に平行な柱状になり、その中ではらせん状に流体が流れます。外核内の電磁流体が磁場を横切ると起電力が生じ、電流が流れ、磁場が作られます。この過程が複雑に絡み合い、元の磁場が作られればその磁場を維持することができるわけです。 地球磁場は様々な時間スケールで変動しています。その中で一番顕著なものは、地球内部の電磁石のN極とS極が入れ替わる「極性逆転」です。古地磁気学の研究成果から、最近の極性逆転は約77万年前に起きたことがわかっています。チバニアンという地質時代の始まりがこれに対応します。極性の逆転間隔には周期性がありません。最近の数百万年間では数十万年に一回程度の頻度で逆転していますが、白亜紀のように約4千万年もの長期に渡って極性逆転が起こらなかった時代があったことも知られています。このような地球ダイナモを研究するために、スーパーコンピュータを使用して大規模な数値計算が行われています。また、地球磁場を観測・解析することによりコアの中で何が起きているかが研究されています。


固体地球 Solid earth

(C) 2021 SGEPSS / CC BY-NC-SA 4.0 固体地球の領域では、火山・地震をはじめとしてマントルの循環など、ごく短期間から数億年以上もの超長期に及ぶ活動が起こっています。この領域は生命活動の場であり、私たち人類の活動から地球史46億年にわたる時間記録が、地層などの形で残されている場所でもあります。 地殻・マントル・外核・内核にまたがる地球内部の構造のうち、直接観察できる場所は地表付近のごくわずかの領域です。その意味で、地球内部は、宇宙・惑星探査に匹敵するフロンティア的研究対象と言えます。我々は、この地球内部の構造やそこで起きる現象の理解のために、電磁気学的手法を駆使して研究を行っています。陸上での地磁気や地電流の観測や,海域や空中・磁場観測衛星での観測、岩石の磁気物性・電気物性を明らかにするための室内実験、地殻変動や火山・熱活動、津波に伴って生じる地磁気や地電流の変化のモデリングなど、観測・実験・理論・シミュレーションなど広く研究を展開しています。 過去の地球・惑星磁場(古地磁気)の研究も主要なテーマです。プレートの形成やマグマ活動、海や湖での砂や泥の堆積、細胞内に微小磁石を形成する磁性細菌の活動などに伴って、磁性を持つ鉱物が形成・運搬されます。この際に、その時の地球磁場の向きと強さに応じた磁気記録が“化石”として保存されます。磁気の“化石”は残留磁化と呼ばれ、地磁気逆転など、古地磁気変動を知るための貴重な手がかりです。我々は、過去の溶岩、海底堆積物、海洋地殻などから試料を採取して分析を行ったり、遠隔で観測を行ったりすることで、残留磁化の様子を調べ、長期的な地球磁場変動を研究しています。また、磁性鉱物の種類・量・大きさなどは火山噴火や浸食作用といった過程の影響も受けます。溶岩や海底堆積物などの磁気分析を行うことで、過去の地球環境変動の様子なども考察しています。


大気圏 Atmosphere

(C) 2021 SGEPSS / CC BY-NC-SA 4.0 地球を取り巻く大気は,地表面から高度数100 kmまで層構造をなしており,この領域全体を大気圏と呼んでいます。 地表面から高度約10kmまでは対流圏と呼ばれており,ここでは高度とともに温度が低下し大気が常に対流しています。赤道から極域に至る緯度方向の大規模な大気循環(ハドレー循環,フェレル循環,極循環)と,経度方向の大気循環(偏東風,偏西風,極偏東風)が存在しますが,このような大気の動きに伴って積乱雲と雷放電が発生したり,空気塊の上下振動で引き起こされる大気重力波なども発生します。はるか遠くの宇宙から飛来してきた宇宙線のうちエネルギーの高いものは対流圏にまで侵入し,空気シャワーという大気中での原子核反応が常に起きています。 高度とともに温度が上昇する高度約10-50kmの領域は成層圏と呼ばれますが,ここにはオゾン層が存在し生物にとって有害な紫外線が地表に届くことを防いでいます。一方,極域ではオゾン層破壊に関与する極成層圏雲(真珠母雲)が冬季に発生し,春になると毎年のようにオゾンホールが発生します。 高度約50-90kmは中間圏と呼ばれています。成層圏と中間圏の大気は,夏半球から冬半球にゆるやかに向かう大規模な大気循環も存在します。また,地球上で最も高い高度に存在する雲(夜光雲)は,大気圏全体において全季節の中で最も低温となる,夏季の極域中間圏の上端付近で発生します。また,対流圏の雷放電が引き起こすスプライトなどの放電発光現象や,酸素・水酸分子(OH)などの原子・分子が太陽紫外線を吸収して弱く光る大気光,さらに,宇宙から飛来した物質が大気に衝突して発光する流星なども,この領域で発生します。 それより高高度の宇宙につながる領域は,熱圏と呼ばれます。極域では磁気圏から飛来した電子が大気と衝突することでオーロラが発生します。また,高緯度から低緯度にかけて伝搬する擾乱現象(中規模・大規模伝搬性電離圏擾乱)も発生します。さらに赤道域では,磁力線に沿って現れる沿磁力線不規則構造や,プラズマバブルなどの擾乱現象も発生します。このように,大気圏でみられる多くの現象がそれぞれの層がもつ特徴に支配されつつ,大気圏下層と上層との相互作用によって引き起こされています。


電離圏 Ionosphere

(C) 2021 SGEPSS / CC BY-NC-SA 4.0 地球大気の上層は、太陽から放射される極端紫外線やX線により、その一部が電離した気体(プラズマ)となっています。このプラズマの密度が濃い高度約60-1000kmの領域を電離圏と呼びます。電離圏は電流が流れやすい性質を持っており、変動の早い地磁気変化を引き起こします。電離圏は、電波を反射・減衰・遅延させる性質があり、短波通信・放送や衛星測位に影響を与えます。また、電離圏電流を起因とする地磁気誘導電流が送電網に影響を与えるなど、社会との関わりが大きい領域です。 電離圏は、周期的な変動(1日周期、季節的変動など)がある他、太陽や上方に広がる磁気圏の活動の影響を受け、時間・空間的に大きく変動します。昼間側では、大気の風と磁場の作用により、中・低緯度で循環する大規模な渦電流や、地磁気の赤道上空で強い電流が流れています。また、地磁気の赤道からやや離れた領域にプラズマ密度分布の極大(赤道異常)が形成されます。日没後には、低緯度で極端にプラズマ密度が低い領域が磁力線に沿う「泡」のように発生する現象(プラズマバブル)や、中緯度で波状構造を持つ電離圏の乱れが現れ、高精度衛星測位の誤差を増大するなどの影響を与えることがあります。 高緯度では、磁力線に沿って上方の磁気圏と接続する電流や渦電流など、複雑な電流系が形成されます。オーロラは磁気圏から降り込む電子が高層の中性大気と衝突し大気が発光する現象で、特に磁力線に沿って電流が上向きに流れる領域では明るく明確な形で現れます。明るいオーロラ領域に沿って西向きに電流が流れて極域の地磁気を乱します。大きな磁気嵐が発生すると、オーロラ活動が活発化して強い電流が流れ、地上の送電網にも影響を与えることがあります。


磁気圏 Magnetosphere

(C) 2021 SGEPSS / CC BY-NC-SA 4.0 電離圏の外側には磁気圏が広がっています。磁気圏は地球の固有磁場が支配する領域で、希薄なプラズマで満たされています。地球磁場の磁力線は太陽とは反対側に吹き流され、磁気圏は釣り鐘のような形をしています。釣り鐘のすぐ外側には衝撃波があり、超音速の太陽風は減速を受け亜音速になります。減速を受けた太陽風の殆どは釣り鐘に沿うように太陽とは反対側に流れ去っていきます。 磁気圏の内部は太陽の磁場が支配する太陽圏から独立しており、特有の世界が広がっています。地球から数万キロメートルの範囲まで光速に近い速さを持つ荷電粒子が地球をドーナツのようにとりまいています。これを放射線帯と呼びます。磁気圏を大規模に循環する対流が強まると濃く熱いプラズマが夜側から太陽に向かって運ばれます。地球付近に溜まったプラズマは赤道環電流と呼ばれる巨大な電流を作り、地球の磁場を数日間乱す磁気嵐の原因となります。また、プラズマの一部が何らかの原因で乱され、磁力線に沿って地球に降下することがあります。降下したプラズマが超高層大気の原子や分子を励起し、光を放出することがあります。これがオーロラです。オーロラ・サブストームと呼ばれるオーロラが急に明るくなる現象があります。このとき太陽と反対側の磁気圏では地球の南北両半球から延びた磁力線が結びつき、濃く熱いプラズマが一気に放出され、数分周期で地磁気が地球規模で振動するなど、磁気圏全体が数十分という短い時間で激しく変動します。地球の上層大気からは常にイオンが宇宙空間に向かって流出しており、その総量は一日当たり数百から数千トンと言われています。 こうした磁気圏で起こる様々な現象は太陽から来るプラズマ(太陽風)と磁場が持つエネルギーによって駆動されています。太陽風の殆どは流れ去ってしまいますが、太陽の磁場が南を向くと磁場のエネルギーが磁気圏に容易に流入するようになり、磁気嵐やサブストームを引き起こすのです。非常に複雑な磁気圏の構造やダイナミクスを理解するために、人工衛星観測、地上観測、数値シミュレーションを組み合わせた研究や、木星や土星などほかの惑星の磁気圏の研究が活発に行われています。


波動粒子相互作用
Wave-Particle interaction

(C) 2021 SGEPSS / CC BY-NC-SA 4.0 宇宙空間は真空ではなく、プラズマで満たされています。プラズマは電子とイオンで構成される電離気体です。磁気圏や太陽圏に存在するプラズマは1立方センチメートルあたり数個程度と非常に希薄です。そのため、電子やイオンはお互いにほとんど衝突することなく運動しています。衝突しないにも関わらず、電子とイオンの運動する方向が変わったり、エネルギーが大きく増加したりする現象が宇宙空間では頻繁に観測されています。これは、衝突を介さずに電子やイオンの速度を変える物理過程が生じていることを示しています。要因の一つとして、宇宙空間で生じる電場や磁場の振動(プラズマ波動)が挙げられます。 プラズマ波動は、電荷を帯びて運動する電子やイオンの影響によって、宇宙空間で自然発生しています。地上の雷により発生した電磁波が、磁力線に沿って宇宙空間に伝わりプラズマ波動となる現象も知られています。プラズマと同様に、宇宙空間のあらゆるところにプラズマ波動が存在しています。発生したプラズマ波動が宇宙空間を伝搬すると、その伝搬の途中で出会った電子やイオンにエネルギーを渡したり、電子やイオンからエネルギーを受け取って増幅したりする現象が生じます。衝突の起きない宇宙空間では、プラズマ波動を介して電子やイオンの間でのエネルギー交換が生じています。この物理過程を波動粒子相互作用と呼びます。波動粒子相互作用によって、光の速さの99%を超える相対論的にエネルギーの高い電子が生み出されたり、磁気圏から電子やイオンが地球に向かって降り込んできてオーロラが発生したりしています。波動粒子相互作用の研究は、科学衛星により宇宙空間を探査する方法、宇宙空間から伝わってきた電磁波やオーロラの発光などを地上に設置した測定器により観測する方法、波動粒子相互作用を計算機シミュレーションで再現する方法によって進められています。


惑星・小天体
Planets and small bodies

(C) 2021 SGEPSS / CC BY-NC-SA 4.0 地球を舞台に研究されてきた太陽惑星系物理学は、いまや月や惑星、小天体、さらには太陽系外の惑星系にまでその対象を広げています。太陽系内には様々な天体が存在し、地球とは全く異なった様相を呈しています。例えば固有磁場に目を向けると、弱いながらも固有磁場を持つ水星、ほとんど固有磁場を持たない金星や火星、強大な固有磁場を持つ木星や土星、自転の軸に対して磁場の軸が大きく傾いている天王星や海王星など、多様な惑星が存在しています。また、木星、土星、天王星、海王星には、地球と同様のオーロラがあることがわかっています。さらには、太陽での爆発に伴って、太陽から大量の放射線が放出される際には、磁場のない火星でもオーロラが光ることが発見されています。一方、大気や天体表面に目を向けると、ほとんど大気を持たない水星や月では太陽風が直接天体表面に吹きつけ、表面の物質がたたき出されるなどで風化が起こると考えられています。また、濃い大気を持つ金星、地球、火星、木星、土星などの天体では、太陽風や天体周辺の高エネルギーイオン・電子は天体表面に到達する前に大気粒子と衝突しています。 天体の持つ固有磁場が外部からのプラズマ (太陽風) の侵入を防いでいる領域を磁気圏と呼んでいます。ただし実際には、磁気圏は完全に太陽風の侵入を防ぎきっているわけではありません。磁気圏の形は固有磁場の大きさや軸の向き、太陽風の強度などによって様々に変化し、太陽風エネルギーが磁気圏、さらには大気や天体表面に及ぼす影響も変わってゆきます。一方、磁気圏やその下部にある電離圏、大気、天体表面では、そこに存在していた粒子の一部が太陽風起源のエネルギー流入によって宇宙空間に運ばれてしまうなど、天体が現在の環境に至るまでの進化にも関わる興味深い現象が起きています。さらには、どうして天体が固有磁場を持っているか、あるいは持っていないのかも、天体形成そして進化を考えるための大事な課題です。そして、これらの惑星圏環境の理解は、生命が育まれる環境の理解にもつながってゆきます。 私たちはジオスペースで得た様々な知識をもとに、月や惑星、小天体、そして系外惑星の周辺空間や表面で起こる物理現象・化学現象、さらには天体内部における固有磁場生成メカニズムなども研究対象とし、人工衛星を直接送り込むことによる直接探査、宇宙望遠鏡による様々な波長での詳細な光学観測、地上からの望遠鏡・アンテナによる光学・電波観測などを用いた研究を行っています。また、観測と観測データの解析だけでなく、計算機シミュレーションを用いた天体環境や惑星磁場の再現、そして惑星圏で生起する様々な現象の理解などを進めています。


太陽圏 Heliosphere

(C) 2021 SGEPSS / CC BY-NC-SA 4.0 太陽から放出される光によって地球の気候は私達にとって生活しやすい状態に維持されています。一方で、太陽からは光だけでなく、太陽風と呼ばれる高温・高速のプラズマ状態のガスも絶えず周囲に放出されています。太陽風は地球を始めとする惑星の公転軌道を遥かに超えて100 AU以上の距離にまで広がっており、これによって周囲の星間ガスを外部に掃き集めた泡状の構造である太陽圏と呼ばれる領域が形成されます。太陽圏の外部には星間ガスだけでなく、銀河宇宙線と呼ばれる高エネルギー粒子も存在していますが、太陽風は銀河宇宙線の侵入も阻害し、太陽圏を守るバリアのような役割を果たしています。 しかし、太陽は絶えず活動しているため、それに伴って太陽圏内の放射線環境も大きく変動します。例えば、11年周期の太陽黒点数の変動は銀河宇宙線強度の変動と非常に相関が良いことが知られていて、太陽圏のバリアが変化することを示しています。また、黒点数が多い、太陽活動の盛んな時期には、しばしば太陽フレアと呼ばれる太陽大気の爆発現象や、それに伴って太陽コロナの物質が惑星間空間に放出されるコロナ質量放出と呼ばれる現象が起こります。このように太陽圏の内部でも、激しい太陽自身の活動によって高エネルギー粒子(太陽宇宙線)が生成されることがよく知られています。


社会との関わり
Impacts on human society

(C) 2021 SGEPSS / CC BY-NC-SA 4.0 地球電磁気・地球惑星圏学会が研究対象としている領域では、人類の社会・生活基盤に大きく影響を及ぼす自然現象が多数起こっています。太陽の活動により引き起こされる地磁気嵐をはじめとした地球磁気圏や電離圏の擾乱は、人工衛星の故障や宇宙飛行士の被ばく、通信・放送の障害を生じさせたり、ときには電力網に大きな損害を与えたりします。また、地震や津波、火山噴火は、多大な人的・物的な被害をもたらします。このような自然災害に対して、その原因となる電磁気現象そのものの解明・予測や、自然現象の発生時期や支配要因の解明、自然現象に誘引される電磁気現象の早期警報への活用など、様々な研究を行っています。一方、社会生活を豊かにするために、航空機・船舶・車両などのナビゲーションの高度化や、地下・海底の資源探査などに電磁気学的手法を活用する研究を推進しています。さらに、遺跡・遺物などに記録された古地磁気を手がかりに年代推定を行うなど、考古学研究の推進にも貢献しています。このように私たちは、地球を取り巻く自然現象の理解を深めることに加え、人類がより安全に豊かに持続的な生活を営む一助となるような研究を行っています。