我が国の地球電磁気学研究の歴史の中で、主だった出来事を挙げると、以下の年表の通りとなる。ここでは便宜上、時代を大まかに6つに区分した。

明治期第一回国際極年に始まる、一連の地磁気観測が盛んに行われた時期
大正期単なる観測・測定のみを手法とする研究が、やや壁に直面した時期
昭和初期理論研究も始まり、第二回国際極年を契機とした成長期
戦時中戦時研究の行われた時期
戦後10年間本学会が創設され、学問として体系化され始めた時期
昭和30年以降宇宙科学時代を迎え、国際地球観測年を契機として大きく発展を始めた時期

 もちろん、これらの分類は境界が曖昧な場合もあり、また、さらに細かい時代に分類すべき場合もある。しかし、明治期以来の我が国の地球電磁気学の発展史を振り返ってみると、大筋では上記の通りであると見ることが出来る。以下の年表中では、この6つの時代を、年の欄に色分けして表示している。

日本の地球電磁気学の歴史年表

出来事
明治15年(1882)第一回国際極年(1st IPY)に自主参加(〜明治16年(1883))。
明治16年(1883)田中舘愛橘、電磁式方位計を考案。
明治20年(1887)ノット・田中舘による日本全国地磁気測量
明治21年(1888)内務省地理局中央気象台が正式に地磁気連続観測を開始
明治24年(1891)濃尾大地震後の田中舘による地磁気測量
明治25年(1892)文部省に震災予防調査会設立
明治26年(1893)田中舘らによる全国地磁気測量(〜明治29年(1896))。
全国4ヵ所に地磁気観測所設立(〜明治30年(1897))。
明治29年(1896)中央気象台で地磁気3成分連続測定開始
明治35年(1902)地球磁力の国際同時特別観測(〜明治36年(1903))。
明治37年(1904)洛北上賀茂地磁気観測所設置(震災予調会)
明治43年(1910)三崎油壷での地磁気観測(震災予調会)
明治45年(1912)水路部第1回磁気測量(〜大正2年(1913))。
大正2年(1913)中央気象台付属柿岡地磁気観測所観測開始
大正6年(1917)ビルケランド東京で客死
大正8年(1919)国際測地学及び地球物理学連合(IGGU)設立
国際測地学及び地球物理学連合内にSection D 設置
大正9年(1920)学術研究会議に地球物理学部会設置
大正14年(1925)東京帝国大学地震研究所設立
柿岡地磁気観測所の再建
昭和2年(1927)日本水路部型磁気儀が完成。
昭和5年(1930)IGGU が IUGG に、Section D が IATME にそれぞれ改称される。
昭和6年(1931)学術研究会議地球物理部会に地磁気及(空中)電気学分科、並びに、国際極年小委員会設置
昭和7年(1932)第二回国際極年観測(2nd IPY)(〜昭和8年(1933))。
中央気象台臨時豊原地磁気観測所観測開始
昭和9年(1934)南洋ローソップ島に大規模な観測隊が派遣され、日食時の地磁気変化の観測などを実施。
昭和14年(1939)日本学術振興会に雷災防止特別委員会設置。
昭和16年(1941)東京帝国大学で地球物理学科設立時に「地球電磁気学」という学術用語を命名。
昭和17年(1942)文部省に電波物理研究所設立
昭和18年(1943)北海道地方での精密磁気測量。
学術研究会議に第2戦時研究班「太陽輻射線及び其の作用」を設置。
昭和19年(1944)学術研究会議に第113戦時研究班「地球磁気及び電気」を設置
東北帝国大学に地球電磁気学講座開設
昭和21年(1946)学術研究会議電離層特別研究委員会(略称:電離層委員会)発足
昭和22年(1947)日本地球電気磁気学会設立
昭和24年(1949)名古屋大学に空電研究所設立。
昭和26年(1951)国際地球電気磁気学協会(IATME)ブリュッセル会議で、我が国の再加盟を承認。
昭和27年(1952)田中舘愛橘逝去(95歳)
日本学術会議に国際地球観測年(IGY)研究連絡委員会設置。
郵政省電波研究所発足。
昭和28年(1953)東京大学に地球電磁気学講座開設。
昭和29年(1954)測地学審議会にIGY特別委員会設置。
IATME が IAGA に改称される。
昭和30年(1955)東大生産技術研究所ペンシル・ロケット1号機を発射。
IGY特別委員会ブリュッセル会議で我が国の南極観測参加を承認。
昭和31年(1956)学術会議にロケット観測特別委員会設置。
第一次南極予備観測隊出発
昭和32年(1957)IGY西太平洋地域連絡会議(於:東京)
国際地球観測年(IGY)(〜昭和33年(1958))。
南極観測隊が昭和基地を設営、越冬開始
京都大学に地球電磁気学講座開設。
昭和34年(1959)学術会議に宇宙空間研究連絡委員会設置。
国際地球観測協力(IGC)
第三次南極観測隊、昨年残置した樺太犬のタロとジロとが生存していることを発見。
昭和36年(1961)国際宇宙線地球嵐会議(於:京都)
内之浦ロケット基地開設。
世界磁気測量(WNS)(〜昭和40年(1965))。
昭和39年(1964)太陽活動極小期国際観測年(IQSY)(〜昭和40年(1965))。
東京大学宇宙航空研究所設立。
昭和44年(1969)宇宙開発事業団発足。
太陽活動期国際観測年(IASY)(〜昭和46年(1971))。
昭和45年(1970)我が国初の人工衛星「おおすみ」打ち上げ
昭和48年(1973)国際地球電磁気学・超高層大気物理学協会(IAGA)第2回学術総会開催(於:京都)。
国立極地研究所設立
昭和51年(1976)国際磁気圏観測(IMS)(〜昭和54年(1979))。
昭和56年(1981)文部省宇宙科学研究所(ISAS)設立
京都大学超高層電波研究センター(RASC)設立。
昭和57年(1982)中層大気国際共同観測計画(MAP)(〜昭和60年(1985))。
昭和58年(1983)国際地球観測百年記念事業
昭和62年(1987)日本地球電気磁気学会は地球電磁気・地球惑星圏学会(SGEPSS)へ改称。
昭和63年(1988)郵政省電波研究所は通信総合研究所へ改称
平成2年(1990)名古屋大学太陽地球環境研究所(STEL)発足(空電研究所の改組拡充)。
太陽地球エネルギー国際共同研究計画(STEP)事業(〜平成9年(1997))。
平成12年(2000)京都大学超高層電波研究センターが宙空電波科学研究センターに改組